最終章 誕生 第2話
記者の横では、黒澤が全体の動きを説明している。
無線を受けた勢子でリーダー役の武井から、
「それでは、勢子が入ります。矢先の安全には気をつけてください」
との連絡が入って、捕獲作業が開始された。
勢子の二人は、記者からみると山の右側から山を回り込むように歩いてくることになる。リーダー役の武井が上流部で、一番上に配置された柴山と同じくらいの標高をトラバースしてくる。
山里は、下流部で瀬名と坂爪と同じくらいの標高を同じくトラバースしてくる。
その姿も、記者からは良く見えている。
正面の大型スクリーン上で、射手や勢子の動きが完璧に把握できる状況であり、これ以上の見学場所はないだろうと思える場所である。
勢子の動きから、射手の方向へ双眼鏡を戻そうとした時に、視野にシカが入った。
数えると七頭のシカが、三頭と四頭の二グループにわかれて、右から左へ、勢子の気配に追われて射手の方向へと移動している。
こうなると双眼鏡では、追い切れない。
「四頭、下流の射手の方向へ行っている」
山里からの無線が入る。
記者は実況中継を聞きながら、大型スクリーンを眺めているような状況だ。
「三頭、上流方向へ行ってる」
今度は、武井からの無線だ。
勢子の二人からもシカが見えている状況だ。しかし、射手側からの無線が一切ない。
勢子とシカの距離が離れると一気に射手とシカの距離が縮まる。
下流部を移動していた四頭のシカの先頭が砂防ダムの下を通過しようとした時、突然前脚から崩れるように転倒したのが見えた。その動きにわずかに遅れて「ダーン!」という銃声が響いてきた。転倒したシカは、雪面に赤い血の痕を残しながら滑り落ちて行く。
続いて、二頭目が同じ場所で倒れて同じように赤い筋を残して滑り落ちていく。その映像から音声である銃声は若干遅れて聞こえてくる。
残りの二頭は、沢を滑り落ちた二頭を追うように一気に下流へと走っていく。
そこで、さらに一発の銃声が聞こえたと同時に、先頭の一頭が雪面に赤い血痕を残しながら滑り落ちていく。さらにもう一発の銃声が、後を追う四頭目のシカを捕らえた。シカは、雪面を滑り落ちていったシカの後を追うように転がり落ちていく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます