最終章 誕生 第1話

 この二年間のハンタースクールの活動は、確かにマスコミからの注目度も高く、最初の学生募集の段階から数々の取材を受けてきていた。瀬名の初捕獲の際には、記者から熱い応援メッセージが込められた記事を書いてもらったこともある。


 開校当時から、継続的に取材を続けてくれた新聞社の担当からは、卒業を間近にした彼ら四人の実力はどのくらい向上したのかという問い合わせがあった。


 実力をどう計るかは、正直なところ難しい。


 まぁ、言葉で説明するよりは、百聞は一見に如かずである。


 彼らの捕獲現場での動きを同行して見てもらうのが一番手っ取り早い。その時の感想を記事にするのは、記者の仕事であってこちらが心配するものではない。


 当日は、北関東のシカ個体数調整事業現場で、巻き狩りを行い、その様子を見学してもらうことで対応することになった。


 同行したスタッフは、黒澤、山里、武井、坂爪の四名であった。


 ワイルドライフマネージメント社の巻き狩りの実力を見せるのであれば、射手にはベテランの山里らを配置することになるが、この日は四人の学生の実力を計り、その成長の様子を記事にしてもらうことが狙いであるため、四人が射手に、山里らが勢子にという配置になった。


「巻き狩りの成果は、射手の技量による」という言葉にしたがえば、この巻き狩りの成果こそが、四人の成長を計るには一番合理的だろうということだ。


 射手の配置は、坂爪が先導することになった。


 上流から柴山、後田、松山、瀬名という順番にならび、一番下に坂爪が位置する。


 勢子は、山里と武井の二人である。


 黒澤は、記者の横にいて、解説する役となった。


 黒澤と記者は、三人が配置について場所を対岸から見渡せる場所に位置し、双眼鏡でその様子を観察しながら取材することになってる。


 射手が配置につく段階から見てもらえるように多少の時間差を設けて、黒澤が記者を見学場所に案内した。


 現場の配置は、記者の正面に雪に覆われた山の斜面が見える。そこに、一筋の沢があって、数か所に砂防ダムが見える。


 坂爪に誘導された射手は、山頂側から沢の右岸側を下りながら、砂防ダムごとに配置についていく。その様子が、記者の持つ双眼鏡の中で手に取るように見える。


「配置完了しました」

という無線が入ってくる。

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