第7章 インターンシップ 第21話
最後に残ったのが瀬名だった。彼女のスキルは、男子三名に劣らないものだが、どうしても捕獲という現場で女子が評価されないという傾向は否めない。
体力的なことを問われれば、小柄な瀬名はそれだけでも不利になってしまうだろう。
卒業を迎えるにあたり、彼女の実家からは、「戻って実家を手伝いなさい」という連絡が増えているようである。大学を卒業して一度は実家に戻ることになっていただけに、両親は今度こそという思いも強いのだろう。
「瀬名さんは、実家に戻るの」
と切り出したのは、後田だった。
「う~ん、わからない。というか、戻りたくはないんだよね。でも就職先が見つからないとね・・・」
進路が決定した三人にしてみれば、彼女の進路が決まってくれればという仲間としての思いも強かった。
「なかなか、希望に合った求人もないしね」
「コンサル関係は何社か良い返事をもらってあるんだけれど、捕獲ができそうなところがなくて・・・」
「えっ!」
「良い返事って、内定もらっているの」
「うん、ていうか、最終面接まで残っている会社が三社ある」
「そうなんだ。じゃ、大丈夫だね」
あまりお互いの就職活動について話していなかっただけに、この瀬名の状況は三人にとっては意外だった。しかし、瀬名は捕獲にこだわりが強く、女性としてこの分野でのパイオニアを目指したいと真剣に思っている様子だった。
「狩りガールって呼ばれるの嫌なの。でもみんながそんな目というか、その言葉で私をとらえているのが良くわかる。
でも専門的な捕獲従事者なんだっていうところをどうアピールしたら良いのかわからないというか、まだ見えないの。
そういう存在として自分を位置づけられたら、良いなっていう漠然とした思いが強くて、なかなか思い切りがつかない」
「ご両親は、実家に戻れって言ってるの」
「うん、今度こそは戻って実家を手伝えって、うるさい、うるさい」
「でも戻る気はないんだ」
「うん、大学卒業の時だって、実家を手伝うだけじゃなくて、お婿さん貰って実家を継げっていうのが本音で、」
「えっ、お婿さん!」
「そう。引っ越しの準備で帰省したら、お見合い写真見せられて、『この人どう』なんてお母さんが言うから、まだその気はありませんって言ったの。
そうしたら、『相手はお婿でもいいって言ってくれていて、家の仕事を継いでもいいって』なんて言うもんだから、私がキレて、急遽実家へ戻ることを取りやめてこの学校に入学したの」
初めて聞かされた、瀬名の進学理由だった。
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