第7章 インターンシップ 第20話

 後田の就職活動に合わせて、柴山も候補となりそうな企業をリストアップして会社説明会にも参加していたが、どうも今一つ自分の将来を託すにはと思ってしまうのであった。


 その感覚は、アウトドアサークルへの加入をためらった時と似ている。


 なんとなく染まるのが嫌だったサークルへの加入と同じように、なにか思いきれないものをどの企業にも感じてしまっていたが、それは本人に言わせれば性格の問題とも思えるのである。


 そんな時に、以前短期の研修を受けていた警備会社の田中が学校を訪問した。


 田中は、会社では新たなスタッフの教育係として現場の捕獲を指導するようになっているとのことであったが、なかなか上手くいかないと学校やワイルドライフマネージメント社に連絡を入れて協力を仰いでいるとのことであった。


 久しぶりに会った田中を見て、彼が短期研修を修了して会社に戻る時、柴山たちに

「いずれ一緒に仕事ができると良いね」

と言い残していたことを思い出した。


 柴山は、田中が勤務する警備会社で採用の予定はないか直接尋ねてみた。


「こんにちは。田中さん。お久しぶりです」


「おぉ、柴山君かぁ。元気にしている」


「はい。お陰さまで。田中さん、打ち合わせの後で、少しお時間をいただきてもいいですか」


「うん。大丈夫だよ。打ち合わせと言うより、今日はご挨拶だから、ちょっと待っていて」


「はい。ありがとうございます。では、講義室で待ってます」


「了解。じゃ、あとで」


 田中の用事はすぐに済んだようで、久しぶりに柴山達の学ぶ講義室へと向かった。


「お待たせ。何かな」


「実は、進路のことでご相談があって・・・」


 そんなやり取りから、話が一気に進み、柴山はワイルドライフマネージメント社と提携関係にある警備会社への就職が決まったのだ。


 柴山の人柄を知る田中が積極的に人事に働き掛けてくれたのが大きかったのと、やはりワイルドライフマネージメント社の捕獲現場で二年間培ったスキルが高く評価されてのは言うまでもない。


 当面は、本社勤務で、人材育成と捕獲事業の営業が主な仕事となるが、柴山の実家近くにも支社があって、将来的にはそちらで同じ捕獲事業を立ち上げるプランまで会社は考えてくれたようであった。


 その結果を家族に報告すると、いずれは地元に戻れる可能性もあることもあって、母親も喜んでくれた。


 こうして、サーパスハンターコースの第一期生男子三名は、全員が進路を決定することができた。


 松山は、犬の訓練を含め、海外での野生鳥獣管理を学ぶこととなった。


 後田は、捕獲事業に事業拡大を考えている調査会社に採用された。


 柴山は、警備会社で捕獲事業に従事する人材の育成を担当する。


 三人が三人とも、専門性をもったフェローとしてのスタートを約束されたわけである。その専門性を活かせるかどうかは、本人の努力次第ということだろう。


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