第7章 インターンシップ 第17話
今回は、役員面接である。
常務と専務との二対一の面接だったが、前回の面接での資料から、「自動通報システム」のことや「シカの捕獲」のことなど、現場での作業内容とそれに伴う手続きなどについての質問があった。
彼らにとっても初めて聞く話題であったためだろうか、「へぇ~」とか「そうなんですか」という声が多く聞かれた。
「現場で一番苦労されたのは何でしたか」
との質問には、
「地元の方々とのコミュニケーションだったと思います。捕獲すること自体は、事業全体の中での割合は十から二十パーセント程度で、その他は事前の調整や事後の報告書作りだったと思います。
とりわけ、事前の地元との調整には同行させていただくだけでしたが、利害関係者との調整など、となりで聞いていても胃が痛くなるような経験でした」
現場の生々しさは、十分に伝わった感じがしたが、役員たちがそれをどう受け止めてくれたかは未知数だった。これまでは調査会社としての実績はあっても、捕獲については若干の生体捕獲の実績がある会社である。
殺すという捕獲は、経験がないだけに、聞き方によっては良い印象をもたれないこともあり得る。
十分に自分の思いは伝えきれたと思った後田だったが、なかなか捕獲事業が世の中には受け入れられていないという感触ももっているだけに相手が望んでいる対応ができているのかは分らなかった。
役員面接を受けていたのは、後田を含めて四人であった。最終的に何人採用されるのかなどは、分かっていない。
大学生の時は、大型哺乳類の調査業務ということで数名の採用内定者がいたこと思い出したが、今回は何人が内定通知を受け取ることができるのだろう。
受付の前を通って玄関に向かおうとしたところで、総務課長から声をかけられた。
「後田君、今日の結果だけれど、郵送ではなく電話でお知らせすることになると思います。携帯か必ず連絡が取れる電話番号を教えてくれるかな」
「はい。携帯番号は履歴書に記載してありますが、来週後半から現場実習で山の中にいるので、水曜日まででしたら携帯にお願いします。それ以降となれば、家の電話で家族に伝言をお願いしなければなりません」
「わかりました。今週中には、連絡できるかと思いますので、携帯にお電話します。都合が悪い時間帯はありますか」
「特にありません。いつでも出られるようにしておきます」
「ありがとうございます。それでは、またご連絡します」
「はい。ありがとうございました。よろしくお願いいたします」
帰宅後から、携帯はなるべく身近に置くようにしておいたが、以前の採用試験を思い出すと役員面接の結果も郵送だったと記憶している。
今回は、携帯電話でしかもいつでもでられるようにというのが引っかかったが、言われた以上仕方がない。
いつ鳴るかわからない携帯電話を手にその連絡を待った。
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