第7章 インターンシップ 第16話

 思い出してみれば、『本当に優秀な人材なら、それを先輩がこうだったから採用しないっていうのは会社にとってよいことではありません』と言ってくれた社長である。採用は、実力次第ということなのだろう。


 一次試験では、一般常識と適正試験が行われた。続いてグループ面接があり、その中には面識はなかったが後田の卒業した大学の後輩もいて、後輩が門前払いなどには遭っていないことがわかり、ホッとした。


 試験が終了して、一週間後に一次試験の合格通知と二次面接の案内が郵送されてきた。


 二次面接は、二年前に内定辞退届を提出した総務課長を真中に、三対一で行われた。


 主に質問したのは、総務課長だった。


「後田君でしたね。専門学校では、望んでいた学習が十分にできましたか」

 と、いきなりこの二年間のことを質問された。


「はい。その節はご迷惑をお掛けしました。御社のご厚意により、進学先では充実した学習ができたと思います」


「具体的には、どのような学習をされたのでしょう」


「はい。大学のアウトドアサークルですでに資格は取得していましたが、現場で必要なスキルはなかなか学べませんでした。専門学校では、捕獲の最前線を経験するとともに、その分野の第一線で活躍されている講師の方々から、様々なスキルを学ばせていただきました。一番大きな学びは、失敗から学ぶという考え方であったかと思います」


「考え方というのは」


「捕獲は毎回違う条件の下で行われます。そのため教科書で学んだ技術がそのまま通用することはありません。応用力を身につけることが重要となりますが、失敗から学べと」


「なるほど。では、貴方が失敗から学んだ例を教えてください」


「私の失敗ではありませんが、狩猟で行われる巻き狩りは、必ず逃げる個体を作りだすので永続性が必要な狩猟にとっては有効な方法ですが、私たちが行う個体数調整では警戒心の高い個体を作りだすことになることから有効とは言えません。


 それを個体数調整でも有効に使えるように、実施する面積を小さくしたり、犬を使わないようにしたり、機動力を活用したり、なによりも射撃技量を高めることで改善していくということを学びました」


「そうですか。その他にはありますか」


「狩猟では、ワナでの捕獲はどちらかというと掛るのを待つという受け身の捕獲ですが、積極的にワナに掛るように運用する方法や、自動通報システムと連動させることで人件費を大幅に削減することなどを学びました」


「そうですか。それでは、本日の面接は以上です。結果は一週間以内にお知らせします」


「ありがとうございました」


 面接室を退出して、大きく息を吐いた後田だったが、この二年間に経験したことを話すことができて、お世話になった総務課長にお礼を言えた気分になっていた。


 一週間後、再び合格通知と第三次面接の案内が送られてきた。

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