第7章 インターンシップ 第15話

 逆に今のままの捕獲では成功は望めないとする意見に対しては、明治以降の乱獲の時代を考えれば猟具も機動力も高くなっている現在の技術力をもってすれば、またもや乱獲を問題とする時代にまで戻る可能性すら感じる。


 草鞋やかんじきを履いて、村田銃を使った捕獲と比べれば、その技術進歩は著しい。


 どこかでしっかりとブレーキを掛ける役割を確保しておかなければ、絶滅させてしまう危険性すらあるとも思える。


 いすれにしても、ベンチャービジネスを成功させるには、「諦めないこと」だろう。


「だって・・・」とか、「でも・・・」とか、言い訳を口にしているようでは、道は拓けない。


 パイオニアに求められるのは、「Never Say Sorry!  ~泣き言は言いません~」という姿勢そのものだろう。


 すでに多くの現場で多くの失敗と成功を経験した四人には、すでにその覚悟はできあがっていた。


 柴山も後田も瀬名も、進学を決めた段階ですでにその覚悟はできあがっていただけに、松山の進路決定の動きをただ単に横目で眺めているだけではなかった。

 

 松山についで進路に動きがあったのは、後田だった。


 少しでも関係のありそうな企業の情報収集は、四人の中では群を抜いて積極的に取り組んでいたが、この学校で学んだスキルを活かせる会社はなかなか探し出せずにいた。


 ある日、黒澤から講義終了後に声を掛けられた。


「後田は、進路について何か考えているのか」


「はい。まだ具体的にはありませんが、サーパスハンターとしてのスキルを役立てることができればと思っています」


「そうか。ところで、株式会社丸山調査って覚えているか」


 株式会社丸山調査は、この専門学校に進学する前に就職の内定をもらっていた会社だ。その会社の内定を辞退して、この学校に進学した後田には、忘れようにも忘れられない会社である。内定辞退の際には、黒澤にも相談に乗ってもらった経緯もある。


「はい。覚えています。というか、忘れるはずもありません。快くこの学校への進学を許していただいた社長さんには感謝しています」


「そうか。後田、丸山調査を受けてみる気はないか」


「えっ!でも、一度は内定辞退してご迷惑を掛けている会社ですし、僕が受けても・・・」


 彼の脳裏には、あの日の社長室でのやり取りや、総務課長との手続きに関するやり取りがよぎった。


 大学の後輩達に迷惑を掛けるのではないかと心配していたが、「そんなことはない」と断言してくれて、なおかつ快く内定辞退を受け入れてくれたあの会社である。まさか、その会社を受けるなんて、後田には思いもよらないことだった。


「まぁ、聞け。丸山調査の社長な、俺の大学の同級生なんだ。お前のことは気にしてくれていて、丸山調査も今年捕獲事業者の認定を受ける予定で準備を進めているらしい。


 そこで、後田のことを思い出してくれたようで、どうだろうかと連絡があったというわけだ。ただし、前回と同じで一般の応募者と同じ採用試験を受けてもらって、その結果で判断するということだが、どうする」


「はい。そこまで気にかけていただけていたのなら、ぜひ受けてみたいです。事業者認定も受けるとなれば捕獲事業にも積極的に関われるということにもなるでしょうから、ぜひやってみたいです」


「わかった。それでは、教務の先生とも良く相談して、書類提出するように」


「はい」


 まさか内定辞退した会社から、受けてみないかとの誘いがあるとは思わなかった。


 黒澤と丸山調査の社長が同級生だとは知らなかったし、二人の間でどんなやり取りがあったかもわからない。


 選考も一般応募者と一緒にとのことだから、本当に後田自身が役立つ人材であると認められなければ採用はしないということだろう。


 教務の先生との相談でも、一度は迷惑をかけている会社だけに、余程必要な人材であると認識してもらわないと採用は難しいかもと言われた。

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