第7章 インターンシップ 第14話

 この業界で働こうとするならば放っておいても大丈夫な彼女を探すか同じ業界内で見つけるしかないだろう。


 若い女性狩猟者は増えているとはいえ、瀬名のような存在は相変わらず超希少種であることに違いはない。


 放っておいても大丈夫な二十歳代の女性も、今の時代超希少種だろう。


 そんな状況で、外国人の彼女を作るなんて、なんて羨ましいことを松山はするんだと思うと後田は松山を弄らずにはいられなかった。


 そんな柴山や後田のやっかみも現場では、重要な潤滑材となる。


 ワイルドライフマネージメント社のスタッフからも冷やかされたりはするが、松山にとっては、英会話の習得という目前の課題の方が重要だった。


 さらに、松山は卒業を目前にした時期には、現地の下見を兼ねて、彼女を伴ってニュージーランド旅行を実施して、アパートや中古車、現地で使う銃の手配などを済ませてくるという行動力を見せた。


 こうなると、学校も彼の進路に手を焼くことはない。


 ここで、作り出される現地のプロハンターとのつながりは、今後の後輩たちのフェローシップとして位置づけられる可能性ももっている。


 とはいえ、そのフェローシップ後にどうなるかは、まだ見えない。


 モラトリアムと考えることもできるだろうが、国内にサーパスハンターが活躍できる市場が形成されるかは、まだまだこれからの課題なのだ。


 鳥獣保護法の改正により、法律名も鳥獣保護管理法となり、鳥獣の捕獲等をする事業の認定制度が導入されることになった。ワイルドライフマネージメント社もその認定を受ける準備を進めている。


 いよいよ法律上でも、従来からの狩猟者による捕獲に加えて、新たな戦力を育成しようという方向性が示されたとはいえ、柴山の父親が彼の進学の際に言った「ベンチャービジネス」という状況にあることは否めない。


 また、十年で生息頭数を半減させるという方針も示されているが、そこまで順調に減らせることができたとしたら、捕獲という仕事は必要なくなるのではという意見もある。


 逆に、今のような捕獲では、獣害対策に成功はないという意見もある。


 しかしながら、この道を目指して学習を続けている四人にとっては、どちらも現状に立ち止まったままの意見にしか思えなかったし、そうなるとは思いたくなかった。


 生息頭数を現状の半分に低下させることができても、その時点における狩猟者数は現状に比べれば半減している。


 農業被害対策は、人類が地球上に誕生してから途絶えることのなかった競争でもある。その競争から人類が退くとすれば、それは農業を放棄する道しかない。


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