第7章 インターンシップ 第13話

 別室にいた瀬名は、このやりとりを後日聞くこととなるが、思わず男子学生三人のやりとりに吹き出してしまった。


「そう言えば瀬名さんは、彼氏いないの」


 ストレートな質問は、後田からだった。二年間も一緒に勉強していながら、これまで誰も聞くことがなかったことに、柴山も松山も気づいた。


「いない。いない。作る暇もない」


 学校とアルバイトで彼氏を作る暇はないというのは、三人には良く分かる。家族の応援のある彼らでも、この二年間は忙しかった。進学の際に、家族の応援や協力が得られず、自力で学費等を稼ぎつつ学業を続けてきた瀬名の頑張りには、彼らは圧倒されそうなくらいだった。


「作る暇はないかもしれないけれど、作る気はあるんでしょ」


「う~ん、どうかなぁ。なんだか面倒くさいっていうか、今の延長で仕事をするとしたら、お付き合いしても一週間くらい連絡が取れないのって当たり前でしょう。そんな状態を理解してくれる人って、なかなかいないんじゃない」


 ワイルドライフマネージメント社のスタッフも、出会いのなさには困っているという話は聞いたことがある。現場での作業が多いことから、出張日数も一年で百三十日を超える。


 たとえ彼女ができても、時には携帯もつながらない山奥の現場で一週間も作業することがあるため、交際が長続きしないらしい。


 最初は、笑い話程度に考えていたが、この業界で働くなら、交際相手には理解のある人が求められる。さらに、そのような人がいれば、しっかり捕まえておかないと大変なことになる。


 笑い話ではなくて、切実な問題として考えなければならないことだと最近では実感するようになっていただけに、いきなり外国人の彼女ができたという松山の行動は、連射で二頭捕獲する神業を確実に超越したものに思えてしまう。


 しかも留学先のニュージーランド出身ともなれば、これからどんなふうに発展するのだろうかと、柴山には他人ごとでありながら考えずにはいられなかった。


 後田は、大学時代に付き合っていた彼女がいたが、彼が就職せずに専門学校へ進学したことで疎遠となって、別れてしまっていた。


 その後も持ち前の明るさで、なんとなくお付き合いしているような女性はいたようだが、実習が忙しくなるとなかなか連絡が取れなくなることから、長続きしていなかったようだ。


瀬名の情報については、なんとなく三人とも疎い。性別の差や彼女の忙しさなどが重なってのことだろうが、彼女のプライベートについて、三人は多くを知らない。

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