第7章 インターンシップ 第3話

 遅くなったとはいえ、なんとか二日間でワナと自動通報システムの設置を終えたところで、武井に質問した。


「皆さんは、何時頃にワナの設置を終えたのですか」


「俺たちは、昨日のうちに全部のワナを設置して、今日は見回りと自動通報システムの設置をしたから、三時頃には終わっていたかな。捕獲したシカの処理が、清掃工場の都合で五時までなので、早めに下山してもらった」


「えっ~、もうシカ獲れちゃったんですかぁ・・・」


「あぁ、昨日俺が仕掛けたワナと三宮さんが仕掛けたワナで、成獣メス二頭の捕獲だった」


「そんなぁ・・・。俺たち、今日ワナを仕掛け終わったところですよ」


「なるほどな。自動通報システムの設置を優先したわけだ」


「はい。中継機の場所だとか通信試験だとかして、今日ワナを仕掛けました」


「マニュアルは読んだよな」


「はい」


「ワナでの捕獲数って何で決まるって書いてあった?」


「えぇっと、捕獲数=ワナ基数×日数×生息密度×捕獲効率でした」


「そうだよね。この事業では、日数を減らせるとメリットが大きいわけだが、その点も理解しているね。そうなると、一日も無駄にできないって考えないとダメだよな」


「そのとおりです・・・」


「我々は、まず下見しながら、通信のことは後回しにしてワナの設置からはじめたの。初日の昼過ぎには、終了したので、あとは中継機をこの当たりだろうという場所に置いて早めに戻ったのが初日。今日は、早朝から動き始めていたのは一緒だったから知っていると思うけれど、ワナの見回りをしながら自動通報システムの設置と中継機を設置して、捕獲個体はその場で止め刺しだけして昼過ぎまでに作業を終えて、お昼に戻りながらシカの搬出をしてた」


「通信試験も終了したのですか」


「あぁ、終了したよ。全部ではなく、電波が届きにくいであろうところを優先して、確実に届くということが明らかなものは何基か省略もしているけれどね」


「要領よくやらないとダメなんですね・・・」


「まぁ、最初だからな。ともかく、ワナを仕掛けないことには捕獲できないわけだから、優先順位は、それが一番。自動通報システムも重要だけれど、見回りの時に設置するのでも間に合うからね」


「なるほど。僕たちは全部が完全でないとって思って、ワナの優先順位が下位になっていました」


「そうだね。できればワナは午前中に仕掛け終わった方が良い。夕方には、シカも動き出すから、夕方まで作業すると警戒されてしまうからね」


「そうかぁ・・・。俺たち、自分たちの作業の終了ばかりに気がとられていて、シカのことを忘れてる」


「そうだな・・・」


「まぁ、落ち込むな。明日からは、回収作業やワナの移設や、秋以降の巻き狩りの下見などやることはたくさんあるから、早めに休め」


「はい」

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