第7章 インターンシップ 第2話

 新しいアイテムは、やる気を高める。


 そのやる気がアップしているところで、最初の実習はワナによるシカの捕獲であった。


 スタッフが数日ごとに交代しながら三ヶ月間連続して作業を行う事業の間に、約一ヶ月間作業に加わることで、ワナによる個体数調整の現場を学ぶということであった。


 現場は、一番近いコンビニまで一時間という山奥だった。


 四人は、事業のスタート時に全員で参加すると、三ブロックを完全に任されることとなり、ワナと自動通報システムの設置をお互いに協力しながら二日間で終了するようにと指示された。


 ワナの設置と自動通報システムの設置に関するマニュアルは、すでに学習していたので、それを現場で自分たちの力で実践するという課題でもある。


 作業の段取りも完全に任されたので、まずはどう進めるかを相談し、今回は後田をリーダーとして、その指示にしたがって実施することにした。


 もちろん、何か意見があれば柴山も松山も瀬名も遠慮無く言える関係である。


 初日の午前中は、四人で各ブロックを歩き、シカの痕跡を探り、ワナの設置場所となりそうなところを地図に落として行った。


 お昼にベースキャンプとしている山小屋に戻ると、地図上で自動通報システムの中継機を設置する場所を確認し、午後はその場所に中継機を設置し、ワナを設置する予定地からの通信試験を手分けして行った。


 日暮れ前に、もう一ブロックにも中継機を設置して通信試験を終了するところで第一日目を終えた。


 ワイルドライフマネージメント社のスタッフも三名体勢で他のブロックで同様の作業を実施しているが、作業の段取りなども完全に任せられていたので、彼らがどんな段取りで実施しているか興味があったが、


「まずは自分たちで考えよう」

と言われて教えてもらえなかった。


 翌日には、残りの一ブロックに中継機を設置すると、手分けをしてワナの設置をすることになった。


 設置するわなは、全部で六十基。各人が十五基を各ブロックに設置する必要があり、かなり忙しい作業となって、最後の一基を設置してベースキャンプに戻った時には、暗くなりかけていた。


「遅いぞ!ヘッドライトは持って行動しているのか」

と武井から声がかかる。


「はい。持っています」


「まぁ、無線機も持っていることだから心配はしていなかったけれど、もう少し時間を考えて行動しないとダメだぞ」

とやや厳しく指導された。


 ワイルドライフマネージメント社のスタッフ三名のうち三宮と鈴木の二名は、夕方には作業を終えてすでに下山していた。


 残ったのは、武井と四名の学生だけである。

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