第6章 実践 第15話
「失敗はしていないの」
「翌日に、全員が大失敗でした。全員が二発ずつ撃って一頭も倒れませんでした・・・」
「それに、最初の勢子で道を間違えて・・・」
「なるほど、最初から上手くはいかなかったわけだね」
「はい。そうです」
「そんな時は、どうするの」
「先生達が、その失敗の原因を指摘してくれて、すぐにリベンジというか、復習させてくれています」
「なるほど。単に失敗したから終わりということではないんだね」
「そうですね。毎回毎回、今のはここが良かったとかここが悪かったって。さらに悪かったところを直すには、こうした方が良いというところまで教えてくれます。そのため六回できるところを四回にしてしまったり、私たちに全部の役割を経験させてくれたりしてもらっています」
大まかな実習の進め方と学生達の実力とを把握できたことで、記者の頭の中には取材のストーリーができつつあったようだ。翌日の作業を前に、その晩の取材を終え、全員が床についた。
翌朝は、朝から小雪が舞っている天候だった。
朝のミーティングは、スタッフの健康チェックからはじまった。
ついで、携行品の確認、安全に関する諸注意と続く。
ラミネートフィルムでコーティングされた地形図を机上に広げると、水性マーカーを使って、勢子と射手の配置が書き込まれていく。ここで、午前中に予定されている二回分の展開が説明された。
地形図から山の様子を想像するのは難しいが、初めて見る記者にとってもわかりやすいものだった。
勢子は、学生の後田と松山。射手は、坂爪、柴山、瀬名、山里、武井である。
車に乗り込んで出発する前に、各自の無線機の確認が行われた。
ここまでの一連の流れは、すでに学生達も何度か経験しており、極めて円滑に進んでいる。
最初の場所は、林道と川に囲まれた小高い丘地形の場所だった。地形図でみても、せいぜい外周が二キロメートル程度の狭い範囲だ。
その丘を上空から眺めて時計盤に置き換えると、勢子は九時の方角から三時の方向へと移動してくることになっている。射手は、坂爪、柴山、武井が一時から二時方向に、その他が四時から五時方向に位置している。
記者は、坂爪と柴山に同行して、最初の配置につくことになった。
配置完了の無線連絡の後、リーダー役の松山から開始の連絡が入った。
「それでは開始します。北側を松山が、ホーンは二回、南側を後田が、ホーン三回でいきます。矢先には、十分気を付けてください」
エアホーンの使い方は、昨晩学生達からも聞いていたが、合理的なツールだということがすぐにわかった。
開始の無線から五分もしないうちに、遠くからエアホーンの音が聞こえてくる。
離れていても、勢子の動きがなんとなくだが、理解できるのだ。
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