第5章 危機管理 第20話

 銃の運用についても、大きな誤解や学生らには理解できないことがある。


 鳥獣被害特措法で、自治体の捕獲実施隊員には銃砲所持許可の更新申請時に必要な技能講習の受講が免除されている。


 普段から、銃器を取り扱うことが多く、その取扱いに慣れているのであればこれは納得できる規制解除かとも思う。


 しかし、銃器の取扱いが相対的に上手いのは都市部に暮らす狩猟者たちである。彼らは、射撃場での練習回数も多く、取り扱いには慣れている人が多い。


 一方で、山間部ではあくまでも狩猟の道具として位置づけられているため、射撃練習をする回数は相対的に少なく、使えれば良いと思われがちで、我流の人が多い傾向がみられる。

 

 結局、被害地域の狩猟者の多くは現場でスキルを身につけることになるが、射撃場に行って練習することが少ない。そのため、本当に安全な取り扱い方法に習熟しているとは言い難い状況がある。


 そのため、特措法で免除を受けられることになった途端に、それまで駆除隊への協力を拒んでいた狩猟者までもがこぞって加入させて欲しいと免除を求めたのだ。


 獣害対策に取り組む人材であれば、世間からは銃器の取扱いにも慣れた専門家だと認識されるだろう。しかし、その多くは、初心者の合格基準に怯えている人たちなのである。


 ワイルドライフマネージメント社のスタッフの中にも、この実施隊員がいる。

 そのため彼らは、技能講習を免除されていることになる。


 しかしながら、自分たちはきちんとした技量を有していますということを証明するために、あえて技能講習を受けている。


 また、その結果は散弾銃であれば二十枚以上、ライフル銃であれば五十メートルで、膝撃ちで二十発撃って、四十点で合格ところ、百六十点以上の成績を残している。


 事業を発注する側の立場で考えれば、どちらにやってもらいたいかは明らかだろう。


 しかしながら、なかなかそうも行かないのが世の中でもある。

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