第5章 危機管理 第11話

「単に狩猟者よりも捕獲が上手ければ良いと思っていたけれど、それだけでは通用しないんだ」


後田は目前に立ちふさがる厚く高い壁にぶつかったような気持ちであった。


「鳥獣害対策って、野生鳥獣をきちんと捕獲することだと思ったけれど、ワイルドライフマネージメント社では、すでにきちんと獲るということはできるけれど、周囲の理解不足がその妨げになっている状況に何度となくぶつかって、そして乗り越えて来ているんだと思う。


 結局のところ、鳥獣害対策って人間の問題で、人間側にこそ解決しなければならない問題が多い気がする」


と瀬名が続けた。


「サーパスハンターに求められる要件って、高い技術力に、高いモラル、それからコーディネート力、柔軟な発想・・・。


 これってスーパーマンだよ。確かに、俺たちは普通の狩猟者以上のスキルをすでにこの半年で身につけつつあるけれど、サーパスハンターを名乗れるのは、まだまだ先になりそうだな・・・」


 柴山も松山も、その重圧に押しつぶされそうな感触を受けていた。


「あぁ、確かに一般狩猟者が数年かけて習得できるスキル以上のスキルを身につけさせることは、単年でも可能だし、実証しているから自信をもって良い。


 けれど、本当の意味で鳥獣害対策を担えるサーパスハンターになるには、もしかしたら一生必要なのかも知れない。しかし、それならばこそ、一生の仕事とするに値する価値のあるものと考えることはできないだろうか」


 問題解決の方法は、ひとつではない。これは捕獲現場での戦術を考えれば当然理解できることであり、現場から学ぶことは多い。


 学校では、階段を登るように一段ずつ彼らにそのスキルを身につけさせようと指導している。


 卒業すれば、それぞれの最前線で即戦力として期待されるとすれば、四年間、いや編入組の三名には二年間という期間はあまりにも短い。


 いくつかの戦術を学ぶことはできるが、その数は限られてしまう。失敗から学ぶという考え方を身につけることができれば、どんな場所に行っても戦術の改良や工夫はできるだろう。

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