第4章 練習 第19話
狩猟技術実習Ⅰでは、捕獲現場へ同行させてもらった。
箱ワナでのイノシシの捕獲現場だったが、各ワナには自動通報システムが接続されていて、通報があると見回りに行くという省力化が図られていた。
ワナにかかったイノシシの止め刺しでは、電殺機と呼ばれるバッテリーを使った器具を使っていた。
仕組みは簡単で、スタッフが自作したとのことであったが、一瞬で殺せる道具で苦痛を与えずに殺処分していくシーンは、狩猟者が銃で撃ち殺すよりも安全でスマートに見えた。
従事者ではないので、見学ということだが、捕殺した個体をワナから引き出したり、トラックの荷台に積み込む作業は積極的に手伝った。
その後、捕獲個体の各部の計測を行い、必要なサンプルを採取する方法などを教えられた。
このようなサンプリングは、繁殖状況や食性などを知る上で、重要なデータを提供してくれることになる。
一方で、過剰な情報収集は現場での作業時間を無駄にしてしまうこともあるので、必要最低限度のデータ収集にとどめるべきであることも教えられた。
その背景となる理由なども、あわせて説明を受けたが、これまでの狩猟では皮を剥いで、肉にすることは経験していたが、このようなサンプリングははじめてであり、新鮮な経験となった。
宿泊先での夜、スタッフからはいろいろな経験談を聞くことができた。
昔なら、狩猟の四方山話といったところだろうが、捕獲のこと射撃のことなど、とりとめのないままに語られた話は、授業以上に記憶にとどまった。
今回の研修の引率役の坂爪が、「だいぶ射撃も上手くなったって聞いているけれど、どうなの」と聞いてきた。
「はい。シングルであれば、一ラウンドで二十枚前後は命中させられるようになりました」
「そう。頑張っているんだね」
「ありがとうございます」
「ところで、スキート射撃では、プールとマークって言うだろう。でもルールブックには、プールもマークも書いてなくて、ハイハウスとローハウスって書かれているの知ってる」
「はい。プールがハイハウスで、マークがローハウスだとは知っています」
「じゃあ、なんでハイハウスがプール、ローハウスがマークって呼ばれるかは聞いた」
「いえ、聞いていません・・・」
というか、考えたこともなかった。
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