第4章 練習 第18話

 何度目かの練習終了後の時に、山里から言われた。


「後田君は、そろそろ所持許可証の更新なのかな」


「はい。次の誕生日で更新です」


「更新に必要な経験者講習と技能講習は、もう受講したのかな」


「いえ。まだです」


 銃の所持許可証は、三年ごとに更新することになっている。その際には、学科講習である経験者講習と実技講習である技能講習を修了して、修了証を受けている必要がある。


「それならば、早めに受講した方が良いね。柴山君も松山君も、一緒に受けてしまった方が良いでしょう」


「まだまだ更新まで間がありますが、そんなに早く受けても良いんでしょうか」


「あぁ、講習修了証明書は三年間有効だから、今後は更新手続きを終えたら直ぐに受講するようにした方が良い。万が一、直前に受講できないということがあると大変だから」


「なるほど。次の更新時に有効な証明書を事前に取得しておくっていうことですね」


「そうだね。三年間の有効期間をそれこそ有効に使うことだね。新しい銃を購入するときにも、修了証明書が必要となるから、持っていると便利だと思うし、なによりも自分の技能を証明してくれるものだから」


 このようなアドバイスは、なかなか受けられるものではない。


 他の狩猟者でも、更新の直前に受講する日程が合わずに苦労していた人がいたし、技能講習に合格できるか不安に思っていた人も多く、なかなか受講しないというのが実態だった。


 万が一、技能講習に不合格となった場合でも、更新の直前でなければ何度か再受講する機会があるわけだ。


 四人は、後田の更新に合わせて、経験者講習と技能講習を受講した。


 後田は、更新後直ぐに二度目の経験者講習と技能講習の申し込みをしたところ、警察の窓口では驚かれたが、その理由を話すと警察官もなるほどと納得してくれた。


 その後、四人は機会をみては、そのような受講計画が合理的ですよと周囲の銃砲所持者にも伝えるようになった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る