第4章 練習 第15話
「お疲れ様。それでは、控え室で銃のメンテナンス方法を教えるから、清掃用具を出してきて」と指示されたが、松山以外は何も用意していなかった。
「すみません。清掃道具、持ってません」
と後田が言うと、
「えっ!じゃ、これまで手入れしたことなかったの」
と聞かれて、
「はい・・・」
と小さく答えるのが精一杯だった。
「銃砲店や狩猟者の先輩から教えてもらわなかった」
「はい。一応、油のついたウエスで表面を拭くようにとは先輩から教わりましたが・・・」
「そう。じゃ仕方ないね。メンテナンス方法を覚えてもらって、道具を大切にすることも勉強だから。それじゃ、我々の道具を貸すから、各人がスタッフから教えてもらって」
そういうと、山里はスタッフに学生を割り振ってくれた。
「坂爪が後田君を、武井が松山君を、坂爪が柴山君を担当して、竹山は同じ二十番だから瀬名さんをお願い。
それぞれの銃のメンテナンスを教えてあげて。わかってるだろうけれど、銃には触らずにね」
「大丈夫ですよ。しっかり教えます」
そう答えると、彼らは自分のメンテナンス道具を貸してくれて、銃身内の鉛落とし、ウエスでのクリーニング、外観の清掃など、細かく指示をしてくれた。
武井は、以前に松山と同じ銃を使っていたとのことで、細かい部分のメンテナンスまで指導してくれている。
上下二連に比べると自動は手入れをする部品が多いという感じだったが、後田の銃は猟野での汚れも取れて、きれいに仕上がった。
クリーニング中、それまで自分の練習をしていなかった山里が練習していた。
一通りのメンテナンスが終わる頃には、山里が控え室に戻ってきたが、山里の射撃を見ることができず、ちょっと残念だったと四人は思っていた。
「お疲れ様。銃はきれいになったかな。今後は、自分たちでしっかりメンテナンスするようにね。
狩猟者の中には、使ったら使ったままでロッカーにしまってしまうという人も多いから、いざという時に、故障なんてこともたくさんある。自分の仕事を支えてくれる道具だから、大事にしないとね」
メンテナンス道具を用意していなかったことを怒られるかと気にしていたが、怒られるどころか振り返ってみても、今日の練習で怒られたことは一回もなかった。
逆に、「ナイスショット!」「上手いね」という褒め言葉しか記憶にない。
正直、運動系の部活なら、檄が飛び交うような練習があるのかとも思っていただけに、なにか拍子抜けする感じだった。
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