第4章 練習 第14話

 一ラウンド目を終えた段階での柴山の根拠のない自信は、クレーのように砕け散っていたが、それ以上にもう疲れたというくらい全身が痛くなってきていた。瀬名は、盛んに腕を揉んだり、肩を回したりしている。


「じゃ、またスタッフの練習ラウンドが終了するまで休みましょう」と山里に言われ、控え室で椅子に座ると、もう立ち上がるのも面倒なくらい、体と頭が疲れていた。


 体が疲れるのは、運動だから当たり前かも知れないが、頭が疲れるという感覚は初めての経験だった。


 控え室から、スタッフの人の練習を見ていると、竹山さんが他のスタッフに比べると命中している数が多いように見える。


 そんな感想を四人が話していると、

「竹山、上手いだろう」

と山里が言った。


「はい。皆さんお上手ですが、竹山さんのスイングがなめらかで安定しているように見えます」


「おぉ、良いところを見ているね。彼女の上手さは、銃を構える動作、挙銃の完成度が高いことで、その結果スイングに余裕があるってところだろうな」


「はぁ・・・」


「まだまだ難しい話だから、技術的なことは抜きにして、射撃スタイルや動きを見て真似ることが大事だよ。それに今日は、挙銃動作については、射台ではやらないから」


「そうなんですか」


「あぁ、今日は各射台での見越しの距離を知ることと、クレーとシンクロしたスイングを経験することが狙いだから、命中や失中に一喜一憂しないことだね。


 まだまだ先は、長いよ。それより、緊張して撃っているから体中の筋肉に余分な力が入って疲れているだろうから、ストレッチして次のラウンドに備えておいて」


「はい、わかりました」


 次のラウンドは、二番プールと三番プールで終わった。


 最後の四ラウンド目は五番マークで十五発を撃ったあとで、最初に経験した七番マークとプールを五発ずつ撃って終了した。


 二、三、五番は、やはり難しく、なかなか当たらなかったが、最初にやった七番では全員が十発とも命中させることができて、気分良く百発の練習を終えることができた。

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