第4章 練習 第13話

 正直なところ、柴山が前の二人の射撃を参考にすることができたのは大きかったろう。


 しかし、なかなか二十枚は命中させられるものではないと聞いていたこともあって、「射撃って簡単じゃん」などと大それた感想をもっていたが、それも休憩を終了して二ラウンド目がはじまるとクレーよりも脆いガラスの自信だったことがわかった。


 二ラウンド目は、スタッフの練習ラウンド終了後に入れ替わることではじまった。


 今度は、瀬名から始まる逆順となったが、最初に入った三番射台のマークで瀬名、松山、後田が二枚だったのに、柴山は一発も命中しなかった。さっき調子に乗っていた自分の姿を思うと、顔が赤くなるのがはっきりわかるようだった。


 次に、五番射台のプールを撃つことになったが、射台に入る前に山里から三番での失敗を丁寧に説明され、注意することを口の中でつぶやきながら撃つことでなんとか二枚に命中させることができた。瀬名、松山、後田ともに二枚だ。


 次に、六番射台でマークを撃つことになったが、ここは全員にとって今まで以上に強敵だった。


 七番射台の横にある放出口から放出されたクレーは、あっという間に目の前を通り過ぎて、気づいた時には、センターポールを超えるあたりまで飛んでいる。

 慌てて銃を振るが、どこを撃っているのかもわからない。


 それでも、一発一発の結果から、今はこうだったというアドバイスを山里が丁寧に伝えてくれる。


 さっきまでは、クレーが自分に接近してくる方向に飛ぶので、狙う余裕が作りやすい「迎え矢」と呼ばれるクレーで、六番マークは自分からクレーが遠ざかる方向に飛ぶので、狙う時間をつくるのが忙しい「追い矢」と呼ばれると説明があった。


 結局、最初の五発で、またもや瀬名と柴山は全敗。松山も全敗したが、引き止まりを起こしやすい後田がなぜか二枚命中させた。


 次はどの射台に行くのだろうかと思っていたが、山里は、「残りもすべてここで撃ちます」と言って、今回は残りの十発を撃ち終わるまで続けざまに撃たせた。


 そのお陰もあってか、いろいろと狙いを変えることで、ようやくどこを撃ったら良いのかがイメージできた頃に十発を使い切っていた。


 結果は、柴山が二枚、松山が三枚、後田が三枚、瀬名が一枚という結果だった。

結局二ラウンド目のスコアは、柴山が六枚、松山が七枚、後田が七枚、瀬名が五枚という結果だった。

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