第3章 入学 第30話
いよいよ銃による捕獲について学べると期待していた三人であったが、次の講義では銃の話ではなかった。
その日の話は「安全管理」というどちらかというとお堅い感じの講義で、久しぶりに山里の講義であった。
「今日は、安全管理ということで私からお話します。なんとなく堅い話に思われるでしょうが、フィールドでの事故を予防するためにも、ぜひ集中して聞いてください。
ところで、皆さんの周囲には、山や海の事故で亡くなったり怪我をされたりした人はいますか」
松山が手を挙げて、「僕の父親の友人は、山で遭難して亡くなったと聞いています。僕も子どもの頃に何度か会ったことがある人でした」
「そうですか。それは残念でしたね。それでは、皆さんの周囲に、交通事故で亡くなったり、怪我をされたりした人はいますか」
すると四人とも手が上がった。
「僕は、小学校の時、交差点で自動車とぶつかって救急車で病院に運ばれました。大きな怪我はありませんでしたが、痛かった記憶があります」と答えたのは後田だった。
松山は、中学校時代の同級生がやはり交差点で自動車に接触して、骨折したとのことだった。
「僕は、親戚の叔父さんが車の事故で亡くなっています」
瀬名は、「友達と言うことであれば、後田君が小学校の頃に交通事故に遭っていますね」と小ネタを入れてきた。
「なるほど。そうなると全員が交通事故は身近に経験しているということですね」
「はい」
「では、狩猟事故はどうでしょうか」
「僕の周囲ではありません。ニュースで、間違って人を撃ってしまったという事故は聞いたことがありますが、身近なところには狩猟者もいませんでしたから、経験していません」と答えたのは柴山だった。
狩猟をやっている後田も、父親が狩猟者である松山も身近で事故の経験はないということだった。瀬名も、身近に狩猟者がいないこともあって、経験はなかった。
「そうですね。交通事故に比べると狩猟事故は、数少ないです。それでも、ニュース性は交通事故に比べるとずば抜けて高く、社会からの注目度も高い傾向があります。
狩猟事故を繰り返さないためには、関係機関が事故の原因等を検証し、その結果を狩猟者全体にフィードバックすることが重要です。
しかしながら、これまでの狩猟事故においてそのような検証や再発防止活動は残念ながら行われていません。注意を呼びかけるチラシや通達などでは、啓発活動の一端は担いますが、残念ながら事故は防ぐことができないのも事実です」
いきなりの本題という感じで、山里は語りはじめた。
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