第3章 入学 第29話

 狩猟者の育成は、難易度は大きく異なるかも知れないが、医師の育成と似ている。


 狩猟者になるにも、医師になるにも、どちらもまずは試験に合格するところが、基本的には同じだ。


 医師の場合、大学入試は別としても、国家試験に合格して医師免許を取得しなければ医者にはなれない。狩猟者も狩猟免許試験に合格して、はじめて狩猟者となれる。


 医師の育成では、統一された呼び方は無いようだが、医師免許を取得後の一年目の研修医をインターンと呼んでいる。


 二年目の研修医は、レジデントと呼ばれることもある。そのあと専門をもった研修医をフェローと呼んでいる。


 まずは資格試験があって、その上に、数年の時間をかけて研修を行って一人前の医師に育てていくというシステムは、狩猟者の育成の参考になる。


 柴山は、まだ装薬銃を使用して狩猟ができる第1種銃猟免許を取得していないが、男子三人はすでに銃砲所持許可は受けている。


 瀬名は、逆に銃砲所持許可は受けていないが、第1種銃猟免許は取得している。いずれも、資格だ。


 まずは、最低限必要な資格はほぼ手に入れている。ここに、階段を上るように、そのレベルにあわせた研修を実施していくことで、一人前の狩猟者となれるだろう。しかし、彼らが目指しているのは、狩猟者を凌駕した存在「サーパスハンター」となることだ。


 狩猟で学べるのは狩猟であり、その狩猟を超える学びは残念ながら期待できない。


 山里は、このコースの立ち上げに際して、「固定概念にとらわれた人材を再教育するのは困難です。固定概念のない若い人材をターゲットにしなければ、成功はありません」と常々言っていた。


 スタート時における、彼らの「科学的捕獲に対する意識づけ」とか「捕獲現場における科学的考察力の育成」は「サーパスハンターコース」の指導教員の間では、重要な指導の柱だった。


 狩猟を学ぶのではない。狩猟を基礎とするが、そこから一歩も二歩も前に進んだ科学的な捕獲に踏み込んで行こうとする精神を作ることが、初期段階でのポイントであり、それは各指導教員の工夫によって十分に果たされたようであった。


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