第3章 入学 第26話

武井は、まずチョコレートバーのような機械を手にした。


「これが、送信機で、ワナに取り付けます。取り付け方は、このマグネットスイッチ部から出ているリード線をくくりワナのより戻し部に繋ぎます。


 ワナに獲物がかかると暴れるので、このリード線が引っ張られて、本体からマグネットスイッチが外れます」


 武井がリード線を引っ張ると、マグネットスイッチが本体から外れて、本体の中央分の小窓部分が赤く光った。


「そうすると、この送信機から電波がでて、こちらの主装置に入ります」


 今度は、防滴ボックスを示し、左側の機械を指さした。


「この多チャンネル受信ユニットで最大四十チャンネルまでの送信機を管理できます。送信機からの信号を受けると、その信号が隣の自動通報装置に入って、そこから事前に登録してある携帯電話に音声通報で知らせてくれる装置です。


 この全体を私たちは、自動通報システムと呼んでいます」


 そこで、実際に武井は主装置の電源を入れて、再び送信機のマグネットスイッチを操作してみせた。


 送信機の小窓が赤く光ると、主装置側の多チャンネル受信ユニットがその電波を受けて反応した。


 多チャンネル受信ユニットにある液晶画面には、送信機の番号が表示されている。この番号を確認すれば、どのワナが作動したかが現場を見なくてもわかる。


 次に、電波を受けた多チャンネル受信ユニットからでた信号を受けた自動通報装置は、接続された携帯電話を操り、事前に登録してあった武井の携帯に電話をかけている。


 武井の胸ポケットに入っていた携帯が鳴り出した。武井が携帯を取り出して、電話をつなぐと、

「こちらは自動通報システムです。ワナが作動しました」

という音声メッセージが流れた。



「すげぇ~」「すご~い」


 四人が同時に同じ感嘆の声を発した。


 その反応を見て、武井は携帯をしまい自動通報システムを復旧させると、改めて携帯を取り出して、今度は電話をかけ始めた。


 リダイヤル機能を使って、武井は自動通報システムに接続した携帯へ電話をしている。


 すると、自動通報システムの携帯がブルブルと震えて繋がった。


「こちらは自動通報システムです。すべての警報は解除されました」

という音声が武井の携帯から聞こえてくる。


「すげぇ~、こっちからも状況が確認できるんだ」


「そうだね。その他に、停電した場合にも通報がくるように設定してある。これを使えば、毎日の見回りを省力化することができるわけだ」


「ほ~」


 四人とも素直だ。


「ほ~」としか反応のしようもないのも事実だが、こんなものが目の前にあることが驚きであり、確かに人件費の削減ができそうな気がする。


「先生、これっていくらなんですか」


「そうだね。五十基のワナを管理するとすれば、ちょうど百三十万円くらいかな」

「高っ!」と後田が反応する。


「でも、人件費三百二十万円だよ」と冷静なのは、瀬名だ。


「そうか。通報があった時だけ見回りに行くってすれば、一回一頭の捕獲として百回だから、

 8,000円×2名×100回=1,600,000円


 錯誤は十頭だったから、

 30,000円

 合計で、百六十三万円だ。自動通報システムと合計すると二百九十三万円だぞ」と柴山が計算する。


「おぉ、二十七万円削減だ!」


「おい、それだけじゃないぞ。これを単年度じゃなくて毎年やってみろよ。翌年からは、自動通報システムがすでにあるわけだから、さらに百三十万円が削減ってことだぞ」


「おぉ、なんか儲かりそう!」


「そうだね。消耗品などもあるから、そうは簡単にはいかないけれど、人件費の削減効果は大きいし、なによりも毎日の見回り業務から開放されることの方が、長い期間の捕獲では重要だね。


 嫌気がさしてくると、見回りをサボったりということも発生するし、捕獲頭数の管理や捕獲時間の把握なども可能となるわけだ」と武井がフォローを入れる。


「すげぇ~」

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