第3章 入学 第12話
その即戦力の養成という位置づけは、最初の山里の講義でも強調されて説明された。
火曜日の『実践狩猟技術論』では、山里が印刷物を綴じ込んだ紙ファイルを人数分持参した。これが、教科書ということだろう。山里の話もそのあたりからはじまった。
「実践狩猟技術論っていっても、理屈ばかりならべていたのでは、なんの役にも立たないから、文字どおり『実践』に重点を置くので、教科書はなし。その代わり、必要な資料を毎回配布するから、そのファイルに綴じるようにして。
一年経てば、それが教科書っていうことになるかな。それでも、今日は最初だから、捕獲の考え方全体を知るような内容で話します。わからないことがあったら、遠慮無く質問してください」
そう言うとプリントの説明をはじめた。
プリントに目を落とすと、以下のような記述がある。
平成二十五年十二月に、環境省と農林水産省は「抜本的な鳥獣捕獲強化対策」を共同で取りまとめ、この中で、当面の捕獲目標として、ニホンジカ、イノシシの個体数を十年後(平成三十五年度)までに半減させることを目指すこととした。
そのためには、今の二倍から三倍の捕獲圧をかけなければならないと考えられる。そのためには、まずは現場での確実な捕獲が重要となる。狩猟のように取り逃がしていてばかりいては到底その目標を達成することができない。
この目標を達成するためには、捕獲効率が現状のままと仮定すれば、捕獲者を現状の二倍から三倍に増やさなければならないことになる。
逆に、捕獲者の数を現状のまま維持すると仮定すれば、捕獲効率を二倍から三倍に高める必要がある。
現状を考えれば、捕獲者数を維持しつつ、捕獲効率を高める工夫が必要だと考えられる。
そのためには、科学的な捕獲という視点から、これまでに捕獲を見直す必要があるということだ。その記述に続いて、『戦略・作戦・戦術・兵站とは』という項目が目に留まった。
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