第2章 迷走 第4話
試験終了から三十分ほど過ぎたとき、県の試験官が入ってきた。
「それでは、合格発表を行います。その前に、本日の試験委員から講評をいただきます」
講評を担当した試験委員は、「猟具の取り扱い」で試験官を務めていた人だった。
「えぇ~、皆様長時間に亘りお疲れさまでした。試験結果は、このあと発表となりますが、あくまで試験結果です。
合格されたからといって、直ぐにワナを仕掛けられるわけではないことは午前中の講義でも説明があったと思いますが、狩猟をおこなう場合には、狩猟免許を取得したうえで、狩猟を行おうとする都道府県に狩猟者登録することが必要となります。
また、本日試験に使った猟具では、実際に現場で使えるものは箱ワナとくくりワナくらいです。
箱ワナも、小型の獣を獲るタイプのものでしたから、皆さんが困っているイノシシに使えるものではないことは大きさをみても明らかかと思います。
いずれにしましても、お使いになる猟具の取り扱いに精通すること、それから捕獲対象となる野生の獣たちの生態や行動などを学ぶことが重要となります。
くれぐれも、捕獲の実施の際には、事故や違反のないように気をつけて行ってください」
あらためて司会進行をしていた試験官が、
「それでは、合格発表を行います。残念ながら不合格の方の受験番号は黒く塗りつぶしてあります。
合格者の方は、その後の事務連絡がありますので、そのままお残りください。それでは、お願いします」
控室の前後に待機していた別の試験官が受験番号の記載された用紙を壁に貼り付ける。受験者は、座席近くの用紙に群がり、自分の番号を探した。
柴山の受験番号四十七番は、消されずに残っていたが、柴山のすぐ後ろの四十八番は黒く消されていた。その他に黒く消されている人はいなかったようだ。
四十八番の受験者はその喧騒が鎮まる前に、部屋から退出していった。
「それでは、座席にお戻りください。本日は、おめでとうございます。免許状は後日、郵送されます。
このあと、必要な方には試験結果を口頭でお伝えすることができますので、ご希望されるかたは、係りまでお申し出ください。
また、来月県主催でワナの設置講習会を開催しますので、そのご案内を配布させていただきます。
ベテラン狩猟者が講師となって、ワナの設置方法等を現場でご説明しますので、ぜひご参加ください。それでは、気をつけておかえりください」
柴山は、自分の点数を確認したいと思い、担当者のところへ足を運んだ。
「四十七番ですが。僕は何点だったでしょう」
「四十七番ですか。えぇ~と、筆記試験が九十八点。法律のところで一問間違いがあったようです。実技試験は満点でした」
「ありがとうございました」
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