第1章 出会い 第9話
「今、各都道府県では、鳥獣害対策の担い手確保のためにも狩猟者を増やそうということから、積極的に狩猟免許試験の開催日数を増やしたりしています。
その効果もあって、右肩下がりの狩猟人口ですが、ワナ猟免許の取得者はここ最近増えています」
講師が示したスライドには、右肩下がりの狩猟人口の動向の中で、若干右肩上がりになっているワナ猟免許取得者の推移が示されている。
「しかしながら、この多くの人たちは、免許は取得したけれど実際の狩猟は行っていないというのが現状です。
また狩猟をした人にアンケートをとったところ、複数頭の捕獲をした人は数パーセントで、他は一頭という人が十パーセントくらい。八十パーセント以上の人が何も獲れなかったと回答しています」
会場から、「へぇ~」という声が漏れる。
「また、今は『狩猟』という言葉を使いましたが、『捕獲』とはどう違うのかご説明します。『捕獲』には、『狩猟』と『許可捕獲』があります。
『狩猟』は、お分かりの方もいるかと思いますが、狩猟免許を所持している人が、狩猟を行う都道府県に狩猟者登録をして、狩猟期間中に定められた猟法で狩猟鳥獣を捕獲することです。
『許可捕獲』は、許可を受けた者が、その許可の範囲で認められた期間、方法等によって行う捕獲です。『許可捕獲』には、有害鳥獣捕獲と個体数調整、学術研究捕獲などがあります」
柴山は、狩猟免許さえあればいつでも捕獲ができるわけではないことは、研究室で教授が話してくれたこともあったため知ってはいたが、ここまで整理して捕獲を考えたことはなかった。
「同じ捕獲ですが、その目的は『狩猟』と『許可捕獲』とでは、異なります。
しかしながら、多くの場合、そのどちらも同じ狩猟者が行うため、目的が曖昧になってしまっている状況が発生しています」
さすがに、このあたりの話についていけている聴講者はほとんどいない様子である。その雰囲気を捉えてか、講師はスライドにはない話へと脱線していった。
「狩猟は、趣味で行うものですから、ノルマなんてありません。まぁ、休みの日のレクレーションとして、一日山で楽しく遊べて、なおかつ獲物があったら嬉しいなというものです。
釣りと同じですね。一方、有害鳥獣捕獲であれば、被害軽減が目的となりますから、確実に加害個体を捕獲する必要があります。
獲れたら良いなでは済まされなくなります。また被害軽減だけを考えるのであれば防鹿柵などで完全に遮断してしまえば目的が達成されることにもなります。
個体数調整だと、いついつまでに何頭獲るというノルマが発生します」
会場もなんとなくイメージができている様子を確認するとさらに話を進めた。
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