第1章 出会い 第7話
確かに言われてみれば一理ある気がするが、やはり自分が志した方向性を否定されたことに対する感情は静まっていない。
「これまで大学や大学院で養成されてきた人たちは確かに優秀です。私なんかよりも、遙かに良く野生鳥獣のことを知っている人もいます。
でも、それは野生鳥獣の行動や生態についてであり、捕獲に関してはまったくの素人と同じ状況の人が多いのも事実です」
「今、現場に必要なのは、科学的な捕獲を理解して実施できる若い捕獲技術者なんです。狩猟者に頼っていた捕獲だけでは、野生鳥獣の逆襲に勝てないんです」
「現状は、船頭役となる研究者はたくさんいて、船が山に登ってしまっています。頭でっかちで捕獲技術のともなわない船頭では、野生動物との戦いには勝てません」
そこまではっきり言うかというくらい、攻撃的な言葉に、会場の多くの聴講者からは不満に満ちた雰囲気があふれている。
しかし、言っていることが事実だとしたら、今自分たちが学び、取り組んでいることは全くの無駄になるのだろうか。
結局はどんなに良い対策案を作ったところで実践できなければ、まさに絵に描いた餅に過ぎない。
これまでの生活でハンターという肩書の人を身近に感じなかったのだから、人口対比で考えてもそんなに捕獲を担う人々が必要なのか。
正直なところ、疑問に感じることではあった。講師が言わんとする内容がまだよく理解できない。
柴山は、いたたまれなくなって、思わず挙手してしまった。
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