終業式
終業式、明日から夏休みだ。
授業は午前中で終わり。運動部はそのまま、練習だそうだ。
色々と大変だな。
そして、俺と優衣は学校でしばらく一緒に過ごせないということで、お互いのお願いを聞くことにした。
文芸部でお互いにパイプ椅子に向かい合わせに座る。
まずは優衣のお願いから叶えることにした。
優衣のお願いは俺の上半身を見せてほしいというものだった。
え、なんで? と思ったが、初体験の失敗のことを踏まえて、もう少し俺の身体に慣れる訓練をしたいらしい。
上半身なら、仮に見つかっても優衣が「私はBL同人誌書いているので、モデルになってもらってます」と言えば誤魔化せる。
いや、苦しいか? まあ、優衣も俺もBLは嗜んでいるので問題ない。
え、お前、BL読んでいるの? と思わるかもしれないが、ファンタジックなBLならまだしも、本当に登場人物の心理描写上手な作品は恋愛小説として読むことが出来る。
実はまだレーベルなど区別がついてない小学生の頃に表紙で、少女漫画と勘違いして買った本がBL小説で、未知の内容の本だったので読んでしまい、結果的に心理描写がとても上手な、後の神作品と呼ばれる作品を運よく引き当てたことで、嗜むくらいにはBLを読めるのだ。
「うん、やっぱり。睦月さんの身体とても綺麗だね」
「そうか?」
「うん、腹筋も割れているし」
「運動部に比べたら、全然だけどな」
ペタペタと可愛い手で俺の腹筋を触っていく優衣。
ちょっと顔が紅いのは照れているからだろう。可愛いからそのまま抱きしめたくなるけど、我慢だ!
昨日も頑張って主砲発射したから、まだ我慢できるぞ、俺!
ちょっと自分に自己暗示を掛けながら、俺は耐える。
「固いね」
「まあ、男だからな」
「温かい」
「そうか」
「触られているとどんな感じ?」
「変な感触だな、他人にあまり触られる機会がないから」
抱きしめ合うとか、手を繋ぐとも違う感覚だ。
慣れないのは仕方がないだろう。
「もう少し、強く触ってもいい?」
「いいぞ」
ぐっと力を入れながら、撫で始める優衣。
俺のへその辺りから、みぞおちの辺りまで、ゆっくりと撫で始める。
しばらく無言で撫でさせていたが、優衣はふと思い出したかのように立ち上がり、椅子を持って俺の右隣に移動してきた。
「優衣?」
「隣の方が撫でやすい」
「そうか」
もうしばらく、好きに撫でさせてあげよう。
そう思っていると優衣は自然な形で胸の谷間に俺の右腕を挟み込んだ。
「優衣?」
そして、俺に密着するように体を押し付けてきた。
嬉しい感触だけど、なんだ?
そう思っていると、優衣が俺の耳元に自身の口を寄せてきた。
俺は何か言いたいのかと思って少し優衣の方に頭を傾けると優衣は俺の耳元に「ふーっ」と息を吹きかけてきた。
「っ」
驚いて身を引こうとすると、優衣はグイっと俺の腕を掴んで離さない。
「優衣?」
「睦月さん」
「な、なに?」
「好きです」
――っ?!
耳元で囁かれた言葉に背筋がゾクゾクした。
「ゆ、優衣、耳元では」
「嫌ですか?」
「嫌ではない、嫌ではないがびっくりしたよ」
「こういうの結構ジャンルとしてあるので、好きなのかと思いまして」
「ま、その悪くはないかな」
俺はとにかく落ち着くためにそう言うと。
「じゃあ、頑張りますね。昨日ちょっと調べてきたんです」
「調べた?」
「睦月さんが好きそうな、セリフ」
俺は天を仰いだ。
これ、もしかして拷問が始まる?
「睦月さんに質問があります」
「はい」
「睦月さんは私が好きですか?」
耳元で囁かれた言葉に俺は優衣の方に顔を向けて、目を合わせながら、かなり照れくさいけど、しっかりと伝えた。
「大好きです」
俺の言葉に優衣は顔を背けて照れくさそうな表情をした。
「前を向いてください」
「あ、はい」
「それとわたしがい言うというまでこっちを向いては駄目ですよ」
「ああ、分かった」
俺はそう答えながら、優衣の言葉を聞く続けた。
うん、一つ言えるなら。
ご褒美と拷問が一緒になった時間かな?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます