相葉七海とのお話


俺は移動教室のタイミングを狙い、相葉の机の中に手紙を入れた。


内容はシンプルに、放課後話がある。少し時間をくれないか? という内容だ。


ただ、今は少し状況が悪い。

だから、手紙を送った理由も書いておいた。


おっぱいランキングに投票したことを謝罪したいとも書いておいた。


手紙を警戒して、呼び出しに応じてくれなくても、これで一応は謝ったことになる。


相葉が呼び出しに応じてくれなった場合は、それを優依に説明する。


優依もこの状況を分かっているので、時間を置いて直接謝るかべきか、一緒に考えてくれる筈だ。


と言うか、本当に間が悪い。

女子からの男子への視線が微妙に痛い。


他のクラスでは、些細なことで口論があったそうだ。それとカップルの喧嘩。


正直におっぱいランキングが原因で喧嘩とか勘弁してほしい。


飛び火は勘弁だ。


そんなことを考えながら、放課後。

俺が今いるのは、部活棟の旧バトミントン部の部室だった部屋だ。


一昔前、運動・文化部関係なく、大半の部活の部室は部活棟にあった。


当時はグラウンド近くに運動部の部室を建てられなくて、急遽そうなっていたはしい。


今はグラウンドやテニスコートなどが近い場所に長屋のような運動部の部室棟がある。


現在は一階の旧運動部の部室は物置きになっていて、部活棟に部室のある文化部部員以外はほとんど来ない。


内緒話をするにはちょうど良い。


ちなみに鍵は掛かっているが、文芸部の部室の鍵を取りに行く時に、何事もないようにここの部屋の鍵も回収して、ここの部屋の鍵を開けた。


見付かれば怒られるかもそれないが、堂々していた方が意外と分からないことのほうが多い。


しばらく、ここでボーッとしていると誰かの歩く音が聞こえてきた。


……来たか。


来ない確率の方が多いと考えていたけど。


まあ、仕方がない。

覚悟を決めよう。


部室の横開きのドアが開き、ジャージ姿の相葉が現れた。


どうやら、部活に行く前に寄ってくれたみたいだ。

部室に入り俺の顔を確認するとちょっと驚いた顔で確認してきた。


「千神がこの手紙を?」

「ああ、ちゃんと謝りたくてな。おっぱいランキングで相葉に投票したこと」


俺の言葉に相葉は露骨に顔をしかめた。

ちなみに、千神とは俺の名字だ。


「改めて、相葉。すまなかった。相葉に不快な思いをさせた」

「…………」


俺が深く頭を下げると、相葉はしばらくすると溜め息をついて、


「……分かったわ。許してあげる。二度とランキングとか馬鹿げたことをしないなら、ね」

「ありがとう、今後は参加しないよ」

「……ついでに、そう言う馬鹿なことをしていたら教えなさい」

「いいぞ、じゃあ相葉の連絡先教えてくれ」

「え、あ、うん。そうね」


俺がそう言うと、相葉は少し動揺した。

けど、俺はそれに触れず、SNSではなく。メールアドレスだけ教えた。


「ま、俺はあまり周りと関わらないから、あまり期待するなよ」

「保険みたいなものよ」


俺の言葉にそう答える相葉。

とりあえず、これで目的は達成した。

文芸部に行くかな。


「それじゃあ、俺はこれで」


そう言って、俺が部室から出ようと動こうとした時、


「待って」

「なんだ?」


相葉に引き留められて、相葉の顔を見ると戸惑うような表情の相葉がそこにはいた。


「あ、あのさ……、やっぱり男子は大きい方が良いのかしら?」

「あー、うーん、一般的には、そうじゃないか?」

「……もっと大きい方が良いのかしら?」


相葉の言葉に俺は考える。

相葉は身長が高め、胸は優依に優るとも劣らない爆乳。形は少し垂れ系。まあ、服の上や競泳用の水着ではそう見えるだけなので、本当に垂れ系なのかは分からないが。


優依が綺麗系のおっぱいなら、相葉のおっぱいはセクシー系。まあ、エロっぱいだな!


「大きさは人各々だからな、小さいのが良いってヤツもいるだろうし、大きいのが嫌だと言うヤツも」

「………………」


俺がそこまで言うと、相葉はがっくりと項垂れた。


「誰だ?」

「え?」

「調べてやるよ、誰にも言わない」

「…………さ、三年の倉林雄一先輩」

「ああー」


何部か忘れたけど、全国大会にも出たことのある、イケメンのリア充だな。品行方正で完璧超人なんだけど……。


「ま、分かった。好みくらいは分かるかもな」

「分かったわら教えて」

「ああ」


こうして、俺と相葉は別れた。





……盗撮騒ぎは関わるつもりはない。アレは警察の領分だ。けど、学校側が内密に終わらせたいみたいだし。下手に動いて学校に睨まれるのは面倒だ。


只でさえ、俺は面倒な家庭だ。

大人しくしておいた方が良いだろう。




そして、俺は文芸部に移動する途中で、スマホを取り出して、連絡を入れる。


「ま、使えるなら使わせてもらうさ。……たまには甘えろとも言われたしな」


けど、金だけは自分で払おう。


バイト代だけでは足りないかもしれないから、貯金を崩すことになるが、ただの高校生一人を探偵を雇って調べるだけだ。一月もあれば大丈夫だろう。


「あ、部室行く前にレモンティーでも買っていくか」



個人的にはアップルかピーチなんだが、学校の自販機にはレモンティーしかない。


「……優依の分、あえて買わずに行くか」


何故かわないのか? はっはっはっ渡り廊下を歩いていると、自販機が目に入った。


そして、同時に閃いた!!


ここ数日、俺は優依とラブラブしていない。ここらで、ラブラブしたい。


出来るなら、キスしたい! でも、ムードもないのに、いきなりキスは出来ない。


ならば! 間接キスはどうだろうか? ハグなどの肉体的なコミュニケーションも良いが、間接キスのような漫画みたいな甘酸っぱい感じも良いのではないか?


うん、作戦はこうだ!!


まずは、俺がレモンティーを飲んでいる。優依も喉が乾く。優依も飲み物を買いに行こうとする。俺が飲むか? と優依に聞く。優依は少し考えて、恥ずかしそうに頷く。


間接キス成功!!


「良し! これで行こう!!」










ーー文芸部 部室



文芸部の部室に入ると優依が緑色のペットボトル飲料を両手でぐびぐび飲んでいた。


「優依さん、優依さん」

「なに?」

「それ、何ですか?」

「新発売のフ◯◯タ メ◯◯◯ー◯」

「……そう、ですか」


結局、この日は俺は優依と間接キスは出来なかった。


と言うか、「炭酸飲んで、ゲップ出そうだから近づかないで」とまで言われた。



正直、泣きそう……。

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