アニメショップ
俺達が通う高校の最寄り駅の北側にあるアニメショップはどちらかと言えば女性ユーザー向けのアニメショップだ。
「凄い」
入り口付近は、大人しいが店内に入るとそこは別世界、俺も初めてこういうショップに入った時は内心かなりはしゃいでいた。
壁や天井に張られた沢山のアニメポスターと飾られたアニメグッズ。
平台に高く積み上げられた漫画やラノベ。
店内はアニメやゲームの音楽が結構な音量で流されている。
「大型店はもっと凄いぞ」
今度、一緒に行こう。と俺が言うと優依は店内を見ながら即座に頷いて、直ぐにーーはっ、となって顔を紅くして固まる。
「どうした?」
「……デートの誘い?」
優依に指摘されて、俺も気づいて顔が熱くなる。
「あー、うん、そうだ」
「……分かった」
俺の言葉に、優依は少し俯いて、俺から手を離し、店内を歩き始める。
客は今日は少な目なのが幸いだな。
人が多いなら手を離さなかったけど、
「どこから見るか」
「グッズとか買わないから、右から」
「ああ、分かった」
ショップは中央に売れ筋商品や新刊、キャンペーン中の物が、右は主に漫画やラノベ。
左はグッズ、女性向け作品。乙女ゲーなどが並べられている。
俺は店内の天井の隅などに設置されている防犯目的の鏡を見ながら、同じ学校の生徒が居ないことを確認。
上級生なら二人で居るところを見られても、ギリギリセーフかもしれないが、同級生は不味い。
ちなみに学年で制服のネクタイとリボンの色が違う。
今は三年生が青で、二年生が緑、一年が赤だ。
幸い、同じ学校の生徒は居ないみたいだな。
内心ホッとしていると、特設コーナーを見ていた優依が俺に問いかけてきた。
「これ、面白いのかな?」
「ん、ああ、○○の○?」
「うん、OPの歌は好きなんどけど、内容はあらすじだけしか知らない」
「俺も読んでない、買うか?」
「……盛り上がっている作品に途中から、読むのは負けた気分」
「あははは……」
まあ、途中からのファンは、最初から応援してる古参のファンにマウント取られやすいしな。
前に新規のファンを攻撃しているヤツをみたことがあるので、俺も皆が面白いと盛り上がっている作品には、手をだし辛いところはある。
「まあ、SNSとかでファンです。とか言わなければ良いんじゃないか?」
「うーん……、また今度にする」
「そうか」
「睦月さんは買わないの?」
「ああ、俺も買わないよ。巻数も多いしな」
俺がそう言うと、優依はチラッと平台に積まれた○○の○を見て呟いた。
「そういえば巨乳が居ないね」
「それが購入する判断基準じゃないからな」
いや、まあ、初めて買うラノベのシリーズは、イラストで巨乳以上のキャラが居るか確認はするけど、でもそれだけで決めてないから。
「あ、じゃあ、この○○の○と、○○○○レ○○ブの新刊、買うとしたらどっち?」
「○○○○レ○○ブ」
決まってんじゃん!ビーチバレーだよ!!
作品としても、性癖としても、少○ジ○○プよりも、○○らだよ!!
あ、でも、○o ○○○○る は買うぞ!!
「スポーツを邪な眼で見るのは最低だと思うよ」
割りと本当にゴミを見るような眼で、優依は俺を蔑んだ。うん、ちょっとゾクゾクする。今、この一瞬だけ、優依は俺だけしか見ていないと思うと、本当に気持ち良い。
「その表情は本当に気持ち悪いから、誰かに見られる前に止めて」
「痛っ!?」
思い切り足を踏まれて俺は我に返る。
「ああ、ごめん。ちょっと逝ってたよ」
優依に心底気持ち悪い、って顔をされた。ごめんね、気持ち悪くて!
「……ちなみに、どのキャラが好き?」
「え?」
「どのキャラ?」
優依のちょっと怒った感じの質問に少し戸惑ったが、直ぐに意味を理解して、好きなキャラを指差すと、
「(優依のおっぱいの形に似てる)」
「ーーっ?!」
優依の耳元で小声でそう伝えたら、優依に思い切り脛を蹴られた。
後に、少し拗ねた優依に、俺はこう言われた。
「私の方が大きく形が良い」
同じオタなのだから、二次と三次が別腹だと知ってる筈なのに、優依の嫉妬が可愛いと思った。
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