第130話 vs 作明高校 後半
後半が始まると佐倉中央は堅実なビルドアップからゴールを目指し始めた。しかし、2点のリードを持つ作明は無理に前に飛び出すことはせずに佐倉中央の動きを自陣で伺っている。あくまでも4点目を狙いに行くのではなくリードを守り切る作戦のようだ。
つかさ(最終ラインを引き上げさせるためにも少し遠い位置から打っていかなきゃ…)
54分に空隈を背負いながらボールを受けたつかさは個人技で空隈のタイミングをずらすと振り返り様に左足を振り抜いた。ゴールからはかなり距離があったため、体勢も完璧ではなく枠内に飛んだものの威力はそれほどなかったため大徳に易々とキャッチされてしまった。
後藤「いいぞつかさ!遠くからでもどんどんシュートを打っていけ!」
引いて守る相手には遠目からシュートを打つことでDFラインを引き上げさせることができるのだ。しかし、作明もその作戦は理解している。佐倉中央の選手で距離のあるポジションからシュートを打てる者が少ないことは筒抜けである。サイドからチャンスを作ってもすぐにクリアされてしまう。72分に選手を交代して攻撃に厚みを持たせても作明の守備はなかなかに堅く、時間は否応なく進む。
72min
柚月→つばさ
梨子→千景
かれん(ついに来た…。一層警戒しなきゃ)
しかし、つばさの投入はやはりひとつ大きなアクセントとなった。1人で持ち上がることも出来る彼女は多少強引にでもペナルティエリア内に切り込むことができる。75分には佐倉中央として初めてのエリア内でのシュートを放った。
チャンスと思った佐倉中央の攻撃はさらに激化した。そしてついに待望の時がやってくる。82分につばさがまたしてもエリア内に切り込むと作明は4人掛かりで彼女を止めにいく。流石のつばさも数には敵わなかったかボールをロストしてしまうが、千景がすぐに拾って左足を振り抜く。
大徳(こんなところで決められる訳にはいかないんすよ!)
大徳は左手一本でボールを弾く。続け様のつばさのヘッドもパンチングでクリアする。ボールはエリア外でつかさがトラップする。
空隈「ブロック入れ!!!」
その声に呼応して数名がボールに飛び掛かるが
つかさ(花さんに浮かせたパスを出す?でもきっとそこはオフサイド…!)
伊織「つかさ!こっちに!」
フリーの伊織がつかさの少し後ろでボールを要求する。つかさはその声を聞くとノールックでボールを落とす。伊織はボールが浮かないようインサイドで抑えたシュートを放つ。
大徳(よっしゃ!止められる…!)
しかし、作明のDFの誰かが伸ばした足に当たって若干コースが変わる。慌てて大徳がそちらに手を伸ばすがボールはゴールネットを揺らした。その瞬間、千景がすぐにゴールの中にあるボールを拾って持っていく。すぐにスタートさせるためだ。大徳は両手を広げて愕然としている。
伊織「おっし!あと一点!絶対追いつくよ!」
会場もいつしか佐倉中央を後押しするムードになり始めている。作明もまだリードしているものの徐々に焦りが見え始めたか、前半の佐倉中央と同じく自陣での消極的なプレーでピンチを招くことが多くなった。しかし、佐倉中央も気持ちの昂りと焦りからかシュートがなかなか枠内に収まらない。
後藤「急ぐな!チャンスは確実に物にしろ!」
主審が時計を確認すると4審の方を見る。アディショナルタイムは3分と表示されている。それを見た作明はただひたすら前線に大きく蹴り出すのみ。佐倉中央はなんとかしてワンチャンスを作り出そうと奔走する。アディショナルタイムが2分経過したところ、メアリーがクリアボールを自陣のかなり前の方で収めると一気に前線に蹴り込んだ。高々と上がったボールの落下地点にはつかさと明日羽が入っているが、つかさが上手いこと反転して体勢を入れ替えて前を向いてボールをトラップする。明日羽がつかさのユニフォームを引っ張るがつかさは倒れかけながら後ろから走ってくるつばさにスルーパスを送る。主審は両手を伸ばしてプレーオン(アドバンテージ)を示す。つばさはそのまま1人でペナルティエリア内まで持っていくが、大徳がものすごい勢いで飛び出してシュートをブロックした。ルーズボールに千景が頭から飛び込み、無人のゴールにボールが向かうが、最後の最後で戻ってきたかれんが頭で触ってラインを割った。主審はCKを示すとともにユニフォームを引っ張った明日羽にイエローカードを提示した。つかさがボールをセットするとすぐに花にパスを出してリスタートする。ゴールまで距離はあったが花は力強く右足を振り抜くが大徳がここでも気迫溢れるプレーでボールを弾き出して再度CKに逃れると、闘牛かの如く雄叫びをあげて鼻息を荒くしている。アディショナルタイムは既に目安の3分を超えて4分に突入している。佐倉中央としてもこれがラストチャンスだ。
千景「キーパー残して全員上がれ!」
ペナルティエリア内には18人の選手がひしめき合っている。つかさは大徳が届かないであろう真ん中にボールを蹴り込むが、それでも大徳はお構い無しにボール目掛けて手を伸ばすとボールにわずかに触れてファーサイドに流れてバウンドする。大徳含め押しつぶされた何人かの選手はまだ倒れ込んでいる。落下地点に最も近かった、もといそこに走り込んでいたのは最後列の真希。一か八かであったが思い切ってボールに頭を叩きつけると、ボールはゴールの天井のネットを豪快に揺らした。会場のボルテージは最高潮に達し、真希は顔をくしゃくしゃにして駆け出すがすぐに千景に捕まってその場に倒れ込み、続けて他のメンバーにも揉みくちゃにされた。作明の選手はその場で蹲ったり倒れ込んで頭を抱える者もいた。主審は時計を確認して後半終了のホイッスルを鳴らした。スコアは3-3の同点。これから延長戦に突入する。
Calcio Girls! Konny @Take-Naka
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