第101話 圧倒
火野がボールを畔上にバックすると、畔上は一気に左サイドに大きく展開した。競り合いに飛び込んだのはマヤと門田。先にマヤが触るが、リバウンドを門田がトラップする。マヤを背負いつつオーバーラップしてきた茨にパスを出した。しかし、飛鳥がボールをカットするとそのまま一気に縦にドリブルした。
茨(私よりも速い!?)
DMFが寄せてきたところを前線にスルーパスを出して浅野がボールを持った。そのまま一気にペナルティエリア内に切り込む。
浅野(さて、中には浅村、赤井、三村か。GKのタイプからしてここまで来りゃ飛び出さんだろうから!)
浅野は低めのクロスを上げた。つかさがそこに走り込みながらヘディングで合わせた。しかしボールは枠外へ外れていった。
つかさ「すみません!」
浅野「気にすんな!次は決めよう!」
林(メンツは良いとはいえ、即席で作ったチームが勝てるわけなんてない…。)
ゴールキックで前線に送るも、つかさと春日井の競り合いはつかさが勝利して浅村に渡った。浅村は得意の流れるようなドリブルで左サイドを駆け上がる。酉野がマークに付くもやはり実力差は歴然。浅村は8月よりスペインリーグを連覇しているアズーラ・マドリーFC所属となっている。酉野は縦への侵攻を遅らせるも、中央の桃子にパスを出されてしまった。パスを受けた桃子は名取に触られる前にダイレクトでシュートを放つが、スイーパーの大石にクリアされてしまった。ボールは神谷と畔上の間に落ちるも先に触ったのは畔上で春日井にバックパスして一旦攻撃を立て直す。
春日井(…守備が整ってるな。ドリブルしても奪われるのが関の山か。)
すると春日井はボールの下に爪先を入れてバックスピンをかけて左サイドに展開した。
飛鳥(チョンボね。流石に流して大丈夫。)
門田に奪われないように体を入れながら流す姿勢を飛鳥は見せていた。しかし、強烈なバックスピンの掛かったボールはバウンドすると飛鳥の横を通り過ぎた。そして走り込んできた門田は左足でダイレクトのクロスを上げた。そこに火野が高くジャンプしてヘディングシュートするが、ボールはゴールの上を超えていった。佐久間は直ぐ吉良にパスすると吉良は一気に前線に展開し、ボールを巡ってつかさと名取がポゼッションを争う。つかさがくるりと反転して名取を置き去りにし、トラップしたところに走り込んできた大石もボールを浮かせて完全に抜き去った。ゴールまでの距離は30mを切った。
つかさ(シュートを撃つにしては早いけど、味方もフォローに入れていないから…)
つかさはボールを止めた所に直ぐ大石と名取が立ちはだかる。つかさは2人のCBの様子をびっと窺っている。ぴくりとも動かないまま。
春日井(ボケっとしてたら…潰す。)
後ろから春日井がスライディングで飛び込むもつかさは全てを理解していたかのようにループで2人の間を通した。
桃子「ナイスパス!」
春日井のマークから外れた瞬間につかさは桃子にスルーパスを送ったのだ。当然フリーのまま、さっきよりもゴールに近い距離から桃子はシュートを放った。
林(こんなので決められてたまるか…!)
桃子のシュートを林は仰け反りながら弾いてコーナーキックに逃れた。つかさはボールを拾ってセットした。エリア内にはエンプレスの中でも背が高い光、大森、吉良、桃子、浅村が控えている。ショートコーナーの位置には浅野もボールを貰う準備をしており、ミドルレンジには神谷が居る。つかさはニアサイドに落ちる球で大森を狙い、大森は春日井ともつれ合いながら頭から飛び込むもゴールポスト手前で茨がクリアする。そのボールにいち早く反応した神谷が鋭いグラウンダーのシュートを放つも林がガッチリ胸に収めた。佐倉中央は守備を建て直す為に自陣に戻り、林は前線へロングフィードするためにボールに回転をかけて落とした。
大石「キャップ!後ろ!」
林「は…!?」
気づいた時にはボールに喰らいつく間も無く、大森がボールを掻っ攫ってゴールネットを揺らしていた。大森はクロスに飛び込んだ後にゴールの中で待機し、林がボールを落とすのを待ち伏せしていたのだ。
大森「優勝したぐらいで慢心してんじゃねえ。気を引き締めろ。」
大森がそう吐き捨てると、林は歯を食いしばり顔を真っ赤にしながらボールを蹴り出した。
林(あの女…ただじゃ済まさない…!)
30分ハーフで行われるこの試合の9分で先制したエンプレスはその後も強さを見せつけた。
15分につかさのスルーパスに反応した浅村が左サイドを切り裂くと、右足アウトサイドでクロスを上げ、浅野がヘディングで中央に折り返すと桃子がインサイドで合わせて2点目を記録。
23分には浅野がボールを保持し、3人を引きつけると飛鳥に渡し、飛鳥はそのままエリア内に侵入してマイナス方向にグラウンダーのクロスを上げ、桃子がこの日2点目を叩き込んだ。
前半が終了すると、佐倉中央は桃子と浅野のお調子者コンビがチームを盛り上げまくった。
桃子「Vamoooos!!!!!」
浅野「Vaaaamooooos!!!!!!」
神谷「アンタたち、少し落ち着きなさいよ」
大森「無理はないだろう。私も叫びたい気分だしな。」
光「フォーメーションはこのままにするか?変化を持たせてもいいとは思うが。」
佐久間「ああ、3-4-2-1とかでも良い。WBを入れれば守備だけでなく攻撃にも厚みが増すだろう。」
浅村がボードのマグネットを動かしてフォーメーションを作った。
つかさ
桃子 浅野
浅村 飛鳥
神谷 マヤ
吉良 光 大森
佐久間
マヤ「つかさはとにかく自由に動きなさい!ゴールを狙ってもいいし、パスでもいいし!」
吉良「よ〜し、後半も圧倒しちゃいましょ〜」
対する日大船橋は林の檄が飛んだ。
林「マーク甘すぎ!10番は勿論危険だけど、それ以外をお留守にしたら全く意味ない!」
春日井「分かりました。私が10番を徹底マークします。皆は他に集中しよう。」
林「後半、無失点は当然だし、逆転するぐらいの勢いで攻め立てて。今の私たちに負けは許されないから。勝つよ!」
メンバーの数人はこの勢いについていけてないような顔をしていた。
大石(1点目は完全にキャップのミスでしょ…それに言及しないとか…)
畔上(無理言わないでほしいものだね。あのメンツから得点を奪うとか…)
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