第100話 最強チーム

自分の部屋でトレーニングをしているつかさの携帯電話が鳴った。

つかさ「もしもし?」

光「つかさ、私だ。土曜日に時間があれば12時から夏合宿のチームの顔合わせを行うから、今から送る場所に来てくれ。」

つかさ「分かりました。」

光「君はいつか必ずチームに戻れる。私も戻れるようお願いするさ。」

つかさ「ありがとうございます!」

光「それじゃあな。」

電話が切れると、つかさはトレーニングを再開した。

土曜日、つかさは光から指示された場所に現れた。光はつかさを見つけると手招きした。場所は練習場などではなく、ビルであった。

つかさ「てっきり、練習もするのかと思ってたのでこんな服装で来ましたが…」

光「大丈夫。午後から少し動きも確認する。」

つかさ「よかったです。この部屋にメンバーがいるんですか?」

光「ああ、メンバーはもう部屋の中にいる。入るが準備はできているか?」

つかさ「…できてます!」

光は頷くとドアを開けた。部屋にいたのは…

飛鳥「久しぶりね。元気にしてた?」

マヤ「話は聞いてるわ。貴女をチームに戻す。それが私たちの役目ってことね。」

桃子「オフシーズンギリギリまで居てやるんだから感謝しろよぉ?」

佐久間「同じチームでやれるとは思わなかったが、心強いな。」

吉良「豪華なメンバー揃ってるから、のびのびとやろ〜ね。」

神谷「みんな貴女のために来てくれたのよ!絶対に勝つ!それだけ!」

浅野「サッカーの楽しさをもう一回思い出そうな!」

大森「気負いするなキャプテン。いや、今は“元”か。まあ、楽しもうな。」

浅村「久しぶりだね。君と一緒にサッカーができることを光栄に思うよ。」

つかさ「すごいメンバー…!私のために?」

光「当然だ。それに、皆今の佐倉中央と試合をしたがってるみたいだしな。」

大森「ま、私が野村を呼ばなければ始まらなかったがな。」

光「はは、そうかもな。とりあえず、この時間はフォーメーションや作戦を考える。幾つか試合中でも変動させたいな。」

飛鳥「各自、思いついたものを紙に書いていったらいいんじゃないしら?」

佐久間「そうだな。それでやってみよう。」

10分ほどで幾つかのフォーメーションは完成した。オーソドックスな4-2-3-1、守備的な5-4-1、WBを使うことで攻撃に厚みを持たせる3-4-3など、変化はつけられそうであった。

光「試合開始時は4-5-1でいこう。配置はこんな感じでいいかな?」

GK 1 佐久間

CB 2 光

CB 3 大森

LSB 4 吉良

RSB 5 飛鳥

DMF 6 マヤ

DMF 7 神谷

LMF 8 浅村

RMF 11 浅野

OMF 9 桃子

CF 10 つかさ

      つかさ


浅村    桃子    浅野


   神谷    マヤ


吉良  大森   光   飛鳥


      佐久間


つかさ「背番号がありますがこれは…?」

吉良「あ、そうそう。特注のユニフォームがそろそろ届いてるはずだから持ってくるね〜」

数分後に吉良は段ボールを部屋の中に運んできた。中からは黄色のフィールドユニフォームと青色のキーパーユニフォームが現れた。

浅野「今回の試合のためだけに特別に作ってもらった。このユニフォームで最高の試合を作ろう!」

桃子「チーム名はエンプレスか!…って、エンプレスってなんだ?」

マヤ「女帝って意味ね。女性の帝王…正にこの最強チームに相応しい名前だと思う!」

浅村「それじゃ、今から各自の車で練習場に向かおうか。対戦相手も呼んでるし。」

運転免許を取得している大森と吉良の車に選手たちは乗り込んだ。試合会場に到着すると、対戦相手は既にコートで練習を始めていた。

大森「少しばかし遅れた。だが、お前たちにとってはいいアップの時間だったろう?」

林「へーぇ、強気ですね。あんまり舐めてると足元を掬いますよ?私たちは佐倉中央に完勝してるぐらいですから。」

そう、対戦相手は総体優勝校で大森の母校、日大船橋高校であった。しかし、林の挑戦的な言い草に桃子が噛み付いた。

桃子「おうおう言うねぇ。大森が居なくなってから強くなったみたいな口じゃねぇか。」

大森「三村、落ち着け。佐倉中央をボコボコにしたのは事実だが、こいつがいるチームじゃなかったからだろう?」

そこにつかさが現れると、日大船橋の選手全員は一瞬焦った雰囲気を見せた。しかし、直ぐにつかさの元に行ったのは春日井であった。

春日井「君が赤井つかさねぇ。チームはどうした?まさか辞めた訳じゃないよね?」

つかさ「半分正解、半分不正解と言っておきます。順当に進めば県大会準決勝で当たるみたいですが…私は出ませんので。」

春日井「ふぅん。ま、出とけばよかったなんて思わないようにね。」

光「おっと、そこまでだ。アップを始めたいからな、君は向こうに行っておいてくれ。」

2人を引き離すと、つかさに耳打ちした。

光「気にする事はない。だが、つかさも…」

つかさ「ええ。今年、そしてあのフルのメンバーと戦う事は無理でも…私が佐倉中央に戻ったら絶対に潰します。」

飛鳥「戻る理由が出来たみたいね。さあ、思い切りやりましょ!」

アップを終わらせて両チームは自陣のコートで円陣を組んだ。キャプテンマークは光が巻いている。

光「兎に角、つかさは自由に動いて自由に味方を使え。過去など気にするな。」

浅野「よし!じゃあ行こうか!」

エンプレスはハイタッチするとフォーメーションに着いた。

つかさ(久しぶりの試合!ワクワクしない筈はない!)

主審のホイッスルが高々と鳴らされた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る