第83話 エースは私らが救う

雷「本当にすみませんでした。」

雷の父「構わないよ。優勝もできない、怪我を残す君は勘当だ。最優秀選手賞なぞ求めてはいない。これっきりだ。」

雷の母「…じゃあ、元気で。」

浅野「おいおい、あんたら本当にこいつの親かぁ?」

雷の父「何だね君は。」

浅野「あ、どもども。紹介が遅れました。こいつを削った張本人でっす。」

雷の母がそれを聞いた途端、剣幕を変えて怒鳴りつけた。

雷の母「アンタなのね!私の娘をっ…!」

浅野「黙れよ。」

雷の母「なっ…!」

浅野「調子のいい時だけ母親面してんじゃねぇよ虫ケラがよ!こいつがどんな思いしてたかてめぇらは知らないよな!」

雷「浅野…もういいの…。」

浅野「アンタらは知らないよなぁ!覚えてないよなぁ!私のこと!こいつと小学校までコンビを組んでいた私をよぉ!」

雷の父「そんなもんどうでもええ!このたわけがっ!もうえぇ!梢!車に乗れ!」

雷の腕をグイと引っ張るが本人は抵抗した。

浅野「それがそいつの答えだ。いいか、彼女はもうお前らとは縁を切る。」

雷の父「そんな事が出来るものか!」

神谷「ええ、もう立証済みよ。」

浅野の後ろに神谷、佐久間、吉良が着いた。

佐久間「悪いな、私の両親は弁護士でな。今回の件を詳しく相談させてもらった結果、縁を切るのは合法との判断が出た。4月になるまで特定の施設で保護したのちに、どこかの家族に引き取られるか1人で暮らしていく。」

吉良「残念だったねぇ。そっちから縁を切れば早い話だったけど、コロコロ話変えるからさ。でも、今の会話を全て録音してるから言ってないとかも通用しないからね。お父さん?」

雷の父「もういい。母さん、乗れ。お前らの顔など一生見たくない。」

浅野「ならスポーツは愚か、テレビ、いや俗世から情報を断つのが最善だよ。私ら将来的に有名になるからさ。」

雷の母「うるさいっ!訴訟してやるからっ!」

吉良「ご自由に〜!さっくの父ちゃん母ちゃんめっちゃ強いんだから!証言台にその子も立たせれば…」

そんなことを話しているうちに黒い車は会場を走り去っていった。

佐久間「おい、吉良。もういないぞ。それと、私をその名前で呼ぶのやめろと何回言ったら分かるんだ!」

吉良「おや、本当だ。ごめんよ。」

雷「ありがとう…。私の為に賞まで皆んなで捨てて…ここまでしてくれて…。」

浅野「気にすんなって。これで好きなこと出来るだろう?お前がやりたい事、今ここで言ってみろって!」

雷「私はサッカーがしたい!」

浅野「よっし、言質取った!神谷、今の撮ってたよな?」

神谷「バッチリよ!」

雷「えっ、どういうこと?」

浅野「お前、色々なクラブからのオファー断ってただろ?私のSNSで今の動画載っけてもう一度オファー来させるんだよ!」

雷は顔を赤くしている。しかし、すぐに微笑んだ。氷で出来たナイフの様に切れた彼女のこれまでの性格は暁月のカルテットによって溶かされて本来の温かさを取り戻した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る