第82話 最後のロッカールーム、表彰式

控室にて

後藤「結果として4-3で勝利。優勝候補で、関東大会でボコボコにされた相手から勝って優勝…本当に気持ちがいいですね。」

話し声がそこで途切れた。

後藤「本当に…よく頑張ったな…。」

号泣しながら後藤は話す。そこにはベンチ外だった6人と水田も一緒であった。

後藤「私は…本当にいい教え子を持ったと思うよ…。時には厳しくしてしまうこともあった…でもそれでも弱音を吐かずに…最後まで頑張ってくれた…。私は嬉しいよ…。」

チームのメンバーも何人か涙を流している。

後藤「そして…試合に出すことが出来なかった人にはこれでもかってぐらい謝りたい…。」

今日の梨子だけでなく、瑞希や咲などあまり出場機会がない選手はその言葉を噛み締めた。

後藤「繰り返すがな、今日でかれんと3年はお別れだ。今度からは残りのメンバーと新入生でやっていかなければならない。最後に私から一言ずつ話させてもらう。」


夏海、佐倉中央の正GKとして、守護神としてここまで本当によく頑張った。我慢強くて他人想いな夏海は必ず成功する。自分の夢である教師になるために、まずは大学で頑張れ!


飛鳥、今日は退場こそしてしまったが、ここまで多くの相手を置き去りにしてきたそのスピードは間違いなくヴィクトリアで即戦力になる。技術を磨いて勝利につなげるんだ!


マヤ、海外はとにかく広い。そして色々な人がいる。自分の考えは勿論だが、他人の考えも受け止めることができれば頭のいいお前なら間違いなく信頼される。悩んだら連絡してくれよ!


亜紀、試合終盤にかけての頑張りにどれほど救われたか分からない。その輝きは無駄にしてほしくないから大学でも是非サッカーに触れてほしい。頑張れよ!


桃子、サッカープレーヤーとしてどの面に於いても申し分ない選手だ。間違いなく世界でも通用する。私は応援しているから、いつの日か良い知らせを期待しているぞ!


かれん、来年当たれるかどうか分からないが、県外の強豪校でも実力は劣っていないと思っている。新しい仲間と共に実力を磨いてもっと強くなれよ!


光、キャプテンとして誰よりもチームのことを想って一つにしてくれた。辛いことも乗り越えてきた。次はまた新人からだ。私はいずれキャプテンになるということを信じている!


それぞれへの言葉が終わるたびに選手からは温かい拍手が送られた。

後藤「さあ、そろそろキャプテンを次の世代に託す時間だな。知っているのは3年と数人か。それじゃあ、光、渡してくれ。」

光はキャプテンマークを腕から外すと選手全員に目を瞑らせた。ビリビリっと音がした後にペタペタと鳴り、光が目を開けるよう指示した。

後藤「来年のキャプテンは、つかさだ!」

その瞬間、控室は大きな拍手に包まれた。

後藤「じゃあ新キャプテンは一言を頼むよ。」

メンバーの前に立つとつかさは話し始めた。

つかさ「新キャプテンになりました。最初、私が選ばれた時はやっぱり違和感がありました。でも、3年生の皆さんが選んでくれたからこそ私がその期待に応えなきゃいけない。でも私1人では当然やっていける自信がありません。皆さんの力をお借りしてもよろしいですか!いや、皆んなで最高のチーム作りましょう!」

千景「そして頼れる頼れる副キャプテンは〜?この私っ!鈴木千景でーっす!」

梨子「やばい。姉さんが移った…。」

控室は笑い声に包まれた。

後藤「というわけでな、新しいチームでも頑張っていこう!さあ、表彰式だ。最後ぐらい全員ユニフォームで行こうじゃないか!」

司会「それでは、今大会の優勝校、佐倉中央高校の入場です!」

会場にメンバーが入ると会場は大きな拍手と歓声に包まれた。そして本部長の前に並ぶと表彰状が読み上げられた。

本部長「表彰状。優勝、佐倉中央高校殿。貴校は当初の通り、大変素晴らしい結果を残しました。よってこれを証します。」

表彰状が光に渡され、トロフィーが夏海に渡された。そして赤色の優勝旗が桃子に渡された。

桃子「重っ…!」

メンバーの一人一人の首には金メダルが掛けられた。

水田「じゃあ、並んでくださーい!」

メンバーは3年とかれんを前列に座らせて後列に残りが並んだ。優勝旗は千景が持っている。

水田「はい!笑ってー!」

シャッター音が切られるとその瞬間は一生の思い出に刻まれた。その後は各自の携帯や取材陣のカメラに次々と写真が収められた。

大会個人賞は以下の通り

フェアプレー賞:佐倉中央高校

得点王:蓬莱リナ(白鶴):9得点

最優秀選手賞:雷梢(令和学園)

優秀選手賞(20名)

GK: 天野夏海(佐倉中央)、青山愛子(佐倉中央)、梅宮さおり(令和学園)

DF:野村光(佐倉中央)、兵頭飛鳥(佐倉中央)、川島仁美(佐倉中央)、国光朋花(白鶴)、磯江由香里(白鶴)

MF:三村桃子(佐倉中央)、早見亜紀(佐倉中央)、長野マヤ(佐倉中央)、高岸かれん(佐倉中央)、渋井天音(令和学園)、雷梢(令和学園)、稲森静香(流星学園)、桂穂波(流星学園)

FW:赤井つかさ(佐倉中央)、鈴木千景(佐倉中央)、蓬莱リナ(白鶴)、福澤紀香(令和学園)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る