第84話 全国大会、終了。

帰りのバスの車内、選手たちはプレッシャーから解放され、色々な疲れで眠っていた。ただひとり、つかさだけ窓の外を眺めていた。これからに対する様々な想いを抱えながら…。

ホテルに着くと、まず出迎えたのは暁月のメンバーであった。そして、その中には今日対角にいた1人のプレーヤーがいた。

光「雷…そうか、上手くいったんだな。」

浅野「あたぼうよ!」

飛鳥「え、ちょっとどういうこと?」

雷「まあ、話せば長いけど、私は雷との縁を切ることになった。4月までは特定の保護施設で暮らして、それ以降は一人暮らしかな。」

亜紀「勇気ある決断だな。」

桃子「それより飯だ飯!こちとら腹が減って仕方ないんだよ!」

佐久間「折角いい雰囲気になったのにな…」

あっはっはっはっは!

夕食の会場ではステージに優勝トロフィー、賞状、優勝旗が飾られ豪華な食事がバイキング形式で用意された。

光「それで、施設ってのはどこにあるんだ?」

雷「一応全国各地にあると思うんだけど、私は千葉にした。」

マヤ「東京じゃなくてもよかったの?」

雷「うん、東京は結構物価とかも高いし、他のところで治安も良さそうなところにしたかったからさ。」

浅野「おい、見ろよ!もう1万回以上も反応が来てるぜ!しかも世界的なクラブも拡散してる!近いうちにどこに入るか決めておけよ!」

雷「そうだね。それと…私はもう雷の名前を名乗らないから新しい苗字を決めなきゃいけないんだ。色々考えたけど、この大会で巡り会えた2人の素晴らしいキャプテンから取って、浅村にしようと思うんだ。」

瑞希「良いと思います!」

咲「浅村梢選手…かっこいい!」

吉良「うんうん、これ以上にない組み合わせだと思うよ。」

愛子「そういえば、つかさ。暁月の選手たちに渡すもの、あるんだよね?」

つかさ「あ!そうだった!ちょっと待っててくださいねー!」

神谷「一体何をくれるのかしら?」

数分後つかさは何かが入った袋を持ってきた。

つかさ「皆さん、3位は受け取らないって仰ってましたが、本部が処理に困るということで私が受け取ってきたんです。なのでせめて形だけでも銅メダルを受け取ってほしいです。」

浅野「素晴らしい選手だな。君は。」

佐倉中央の選手たちはメダルを暁月の選手たちに次々と掛けた。

井原「これが友情ですか。」

後藤「ええ、彼女らからしたらこの大会で最も大きい収穫かもしれませんね。」

笑いながら食事をして会話をする光景を眺めて2人は自然と心が落ち着いていた。

翌朝、バスはメンバーを乗せて神戸市内を去った。バスの車内ではインタビュー映像が映し出されていた。

司会「まずは、佐倉中央高校の監督、後藤監督にお話を伺います!今のご心境をお聞かせください!」

後藤「嬉しい気持ちは勿論あります。ただ、これで数人はもうチームから去るので寂しいという気持ちもありますね。チームとして初めて公式戦に出てから凡そ1年で本当に最高のチームを作り上げる事ができたと思います。ただ、それは私の努力ではなくて選手たちが良く考えて努力をした成果だと思っています。」

司会「対戦相手の令和学園は関東大会で負けていましたが、今日は試合前、試合中にどんな声掛けをしましたか?」

後藤「特にこれと言ってしてません。ただ、ここまで来たら相手なんか気にせずに優勝を持って帰ろうと。」

司会「ありがとうございました!次はキャプテンの野村選手にお話をお聞きします!今の心境をお聞かせください!」

光「最高です。最後まで仲間を信じて良かったなと思います。」

司会「途中、何度も追い付かれましたが、勝利への原動力は何だったと思いますか?」

光「勿論、関東大会のリベンジもそうでしたが、やっぱり同じ千葉県代表だった暁月高校の想いも背負って勝たなきゃいけないという気持ちが勝利に結びついたと思います。」

司会「最後に一言をお願いします!」

光「佐倉中央、最高ーっ!」

司会「次に本日2得点、1年生にして10番を背負っていた赤井つかさ選手に伺います。得点した時、どんな感情でしたか?」

つかさ「関東大会では点を奪えなかった相手から先制点と決勝点を取って、いろいろな気持ちが湧いてきましたがやっぱり嬉しいというのが一番大きかったですね。」

司会「苦戦を強いられたと思いますが、最も影響のあった選手は誰でしたか?」

つかさ「どの選手も上手かったし手強かったですが、後半の頭から出てきた堀越選手は本当に強かったです。またいつかどこかで当たる機会があれば完璧に勝てる様にしたいですね。」

司会「最後に一言、お願いします!」

つかさ「応援してくださった方々、そして支えてくれた皆様、本当にありがとうございました!」

司会「現場からは以上です。」

メンバーはその後も車内で会話などをしつつ、バスは高速道路を進んだ。

8時間後の午後5時に長い旅を終えてバスは佐倉中央高校に帰ってきた。そこには多くの教員や生徒、保護者が待ち構えており、厚い待遇がされた。

後藤「さあ、長かったシーズンも今日で終わりだ。4月からは新しいシーズンが始まる。本当に今日までよく頑張ったな。最後に光から一言皆んなに向けて頼む。」

光「長いシーズンお疲れ様でした。このメンバーだからこそ成し遂げられたこの栄光、多くのメンバーが残る次の世代が必ずしも成し遂げられるわけではない。苦しいことも続くかもしれない。でも堪えて頑張ってほしい。私はプロになるが、いつでも会いにきてくれ。皆の活躍、期待しているから。本当に今までありがとうございました。」

多くの人から拍手を受けた光は涙を拭った。

つかさ「3年生の皆さん、そしてかれんさん、お疲れ様でした。またいつか!」

その掛け声でチームは解散した。

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