第70話 勝ちは諦めない

後半が始まると流星学園は1点を守り切るのではなく、得点を追加してから逃げ切るという作戦らしくガンガン攻め上がってきた。中野のシュートが雛に当たり、CKになろうかとその時

仁美(CKでも脅威ならスローインに逃げる他ない…!)

ものすごい勢いで仁美がスライディングでボールをサイドラインへとクリアした。

光「仁美!助かるぞ!セットプレーは出来るだけ少なくしよう!」

稲森(じれったい奴らや!そっちがその気ならこっちだってとことんやったるわ!)

後半開始10分間は流星学園の雨霰のシュートが佐倉中央を脅かしたが、気持ちを切り替えた愛子のパンチングやセーブで0点に抑えた。しかしそんな事も束の間、12分に中野がボールを持つと雛、光を次々と抜き去って愛子と1対1の状況を作られてしまった。愛子は果敢に飛び出して倒れ込みながらボールに向かうが、中野は一枚上手。チップキックで愛子すら抜き去ってしまおうとした。しかし、愛子は身体を跳ねさせてボールを片手で止めると、そのまま胸の中に収めた。

愛子(ここからはどんな事があっても失点はしてはならない…!)

この時間帯、両チームとも少しずつ疲れが見え始めてきた。スタミナが無くなってきた時に活躍するのが亜紀。光からボールを受けると稲森にスピード勝負を仕掛けて勝利し、そのまま前線にスルーパスを送った。桂がカットするが、そのカットした足ごと桃子が刈ってドリブルを仕掛けた。桂はファールをアピールしているがノーファールである。

桃子「梨子!走れ!」

桃子は梨子にキラーパスを出した。そこそこスピードのある梨子は当然相手よりも先に追いついた。

梨子(もっと来い!出来れば4人ほど!)

思惑通り梨子は4人の選手に取り囲まれたが足元にはボールがない。ボールは選手の後ろから走ってきていた仁美がフリーのままドリブルしていた。梨子は一瞬で相手の間を通すスルーパスをして見せたのだ。センターラインを超えた辺りで仁美は大きく逆サイドに展開した。

かれん(一見私を狙ったように思えるけど、これはあくまでも経由!)

ボールがバウンドする瞬間、かれんは軽く飛んでヒールで更にスルーパスを送った。それを追いかけるのは全国トップクラスの俊足を持つ飛鳥。寄せてきたSBを置き去りにすると一気にペナルティエリアに侵入した。GKはポストの前に立って構えている。ギリギリまで粘ってマイナスにクロスを上げた。

桃子(完璧!もらったぜ!)

ヘディングで鋭角に叩きつけられたボールはゴールど真ん中に突き刺さった。

「うおおおお!!!!!」

桃子は観客席にいるつかさを指差した。まだ勝負を諦めていない、絶対勝つからという思いを込めて。そこに飛鳥、瑞希、マヤが飛び込みバランスを崩しそうになったが立て直した。

稲森「くそッ…同じ奴に3回も…!」

中野「勝負を諦めるのはまだ早いですよ…。時間は15分もありますから。」

桂「そうや。向こうも同じ気持ちやろから、精一杯ぶつかり合おや!」

後藤「スイッチが入るとマズい。真希、千景、咲、伊織。一気に行くぞ。」

後26

OUT:19 雛 17 梨子 20 仁美 21 瑞希

IN:13 真希 18 伊織 22 咲 11 千景


後藤の予想通り、流星学園は最後の力を振り絞って総力戦を挑んできた。

咲(SBはやった事ないけど、仁美は常にCKにならないようにしていたから…)

伊織(とにかく身体を張って…!)

千景(攻撃ではなく寧ろ守備を中心に…!)

真希(もちろん勝ちを狙うけど最悪PKに…)

佐倉中央はゴールを破らせまいと必死でボールをクリアしている。

光(ロスタイムは何分だ!)

四審は1分と表示した。

桃子(短い…!)

マヤ(PK戦になりそうね…)

亜紀(ワンチャンス、ありそうか?)

つかさと真帆は祈るように試合を見ている。

中野(このまま逃げ切りなんかさせない)

流星学園はGK以外の全員が佐倉中央陣内に入ってプレーをしている。言わばパワープレイだ。桂がクロスを上げると、中野は飛び上がって足を振り上げた。

愛子(バイシクルなんてつかさのシュートで何回止めてきたと思ってるんだ!)

愛子はボールを右拳で思い切り殴った。エリア外にいた桃子は一か八かの勝負に出た。

桃子「飛鳥!走れぇ!」

主審は時計を確認している。まだ笛は咥えていない。大きく前に蹴り出されたボールを飛鳥が追いかける。一番最初にハーフウェイラインを越えたのは飛鳥でそこにDFが続く。

飛鳥(ラストチャンス…!逃すわけにはいかない!絶対決める!)

どんどんゴールは近づく。ペナルティエリアに差し掛かるとき、GKは遂に飛び出してきた。タイミングを見計らってループシュートを放ち、GKと衝突したが…

飛鳥(コースから外れている…!?)

ボールは左ポストよりも左に向かっていた。GKも触っていないのでこのままだと流星学園ボールとなって試合終了になる。しかし、そこにもつれあいながら飛び込んだのは最後列に居たはずの光。稲森が何とか先に触ろうとするが光が先にヘディングでボールのコースを変えてシュートを決めた。

光「きたぁぁぁぁぁ!!!!!」

会場は劇的なゴールに大きく湧いている。観客席にいたつかさと真帆も泣きそうな顔で抱き合っている。光はベンチに走りだしてメンバーと抱き合ったとき、試合終了の笛が鳴らされた。

流星学園は殆どのメンバーがその場に蹲った。ベンチのメンバーも目頭を押さえている。そんな中、中野だけが一人一人に声をかけている。

セレモニーが終わった後

後藤「素晴らしい。それしかないな。これで遂にベスト4だが相手は昨年優勝校の白鶴だ。」

選手たちの顔が引き締まる。

後藤「ここまで来たからには優勝して帰りたいな。明日、あったらその次の試合は今までとは比にならないぐらい辛い戦いになるかもしれない。でも、お前たちならやれると信じてる。絶対勝とうな。」

評価点は以下の通り。

愛子:7

光:9 1G

雛:6 YC(後26 OUT)

仁美:7 1A(同上)

飛鳥:8 2A

マヤ:7

亜紀:8

梨子:7(同上)

かれん:7

桃子:10 3G

瑞希:7 1A(同上)

真希:7(後26 IN)

咲:6(同上)

伊織:6(同上)

千景:6(同上)


浅野「何とか逃げ切れたな。」

神谷「やっぱりこのクラスになると相手も穴がなくなってくるわね。」

佐久間「次は…」

吉良「そうだね。私たちは関東で当たらなかったけど…」

浅野「恐らく最強の令和学園だな。佐倉中央も勝ち進んだみたいだし、明日勝って決勝で当たりたいな。」

佐久間「作戦をしっかりと立てよう」


準々決勝の結果は以下の通り


令和学園5-0作明


暁月1-0黎明長岡


白鶴学園2-1藤枝陽明


流星学園3-4佐倉中央


準決勝の組み合わせは以下の通り。

令和学園vs暁月


白鶴学園vs佐倉中央

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