第69話 乱打戦
準々決勝当日、流星学園は青と黄色のストライプのシャツで見参した。まさに夜空に流れる星のようなデザインだ。
佐倉中央のスタメンは以下の通り。
GK:12 愛子
CB:2 光
CB:19 雛
LSB:20 仁美
RSB:3 飛鳥
DMF:6 マヤ
DMF:8 亜紀
LMF:17 梨子
RMF:7 かれん
OMF:9 桃子
CF:21 瑞希
ベンチ入り
1 夏海 11 千景 13 真希 14 花 16 柚月
18 伊織 22 咲
ベンチ外:10 つかさ
桃子「つかさがベンチ外って…本当に大丈夫なんですか?」
後藤「変わるか?桃子?」
桃子「いえ…大丈夫です…。」
後藤「つかさは2試合連続フル出場をしている。これはウチではつかさだけだ。確かにつかさはやらせようと思えばGK以外ならどのポジションもできるが、このチームがつかさ在りきになってはいけないと思った。」
つかさ「私は皆さんを信じています。ここで勝って必ず次に駒を進めて下さい!」
コートの中でスタメンは円陣を組んだ。
光「つかさ、そしてリタイアをしてしまった4人のためにも今日は勝とう。戦術を常に頭の中に入れてプレーしよう。佐倉中央勝つぞ!」
「おーーーー!!!」
前半は佐倉中央ボールで瑞希と桃子がサークル内に立っている。
桃子「勝つぞ。」
瑞希「はいっ!」
主審が笛を鳴らすと瑞希が触って桃子が下げる。本来はそれが普通であるため流星学園も積極的にプレスに行こうと5人ほどが佐倉中央陣内に入って行ったが、桃子はボールをアウトサイドで前に転がした。
稲森「早よ戻れ!」
桃子は瑞希と二人で上がっていく。前方からDMFが二人、遅らせようと走ってきたがワンツー交換であっという間に抜き去った。前には3人が待ち構えている。しかし、桃子はスピードを上げるとDFを嘲笑うかのように抜き去ってしまった。
桃子(つかさ、絶対連れてってやるからな!)
桃子の前にいるのはGKだけ。前に出てきたところを右を抜くグラウンダーのシュートを放ち、開始から僅か20秒で先制点を奪った。
つかさ「入った!やった!」
真帆「すごいすごい!」
桃子「よっしゃあ!」
準々決勝以降はテレビ放映もされるので桃子は真っ先にカメラ前に行った。そこに瑞希も加わってお馴染みのMのポーズをして見せた。
桂「あかんな。舐めてたわ…」
稲森「まだ始まったばかりや。内にも得点屋がおるやろ。」
キャプテンマークを巻いた稲森が見つめる先は伝統ある流星学園の10番を背負うFWの中野。彼女は初戦でハットトリックを達成している。
稲森「中野、頼むで。」
中野「…」
彼女はいつもこんな感じでほとんど感情を表に出さない。試合が再開すると、流星学園は前線を中心にプレーをし始めた。佐倉中央は落ち着いてボールをカットやクリアして失点の芽を潰している。
しかし、腐っても全国出場校。基本的な能力はやはり高くパワー、テクニック、フィジカルのどれを取っても初出場の佐倉中央を凌いでおり佐倉中央陣内は段々と押されてきた。
稲森(チャンスや!このまま攻め続ければ!)
11分、稲森がボールを持つと強引にDMFの二人を突破した。マヤを抜き去ったとき、ボールが少し離れたのを見逃さなかった雛はスライディングでカットしようとしたが、稲森の口は笑っていた。
光「雛!飛び込むな!」
時すでに遅し。雛の足はボールをガードした稲森の足に命中し倒れた所に笛が鳴らされた。主審は雛にイエローカードを提示した。
雛「すみません、少し焦ってしまいました。」
光「切り替えよう。気をつける場面だ。」
流星学園は5人がボールの近くにいる。何やら話が終わると、二人がボールの前に壁として立った。
愛子(ボールが見えない…)
瑞希「触りました!」
光「えっ?」
佐倉中央の壁はまだ完成していない。そのとき、目の前の壁が左右に分かれて中野が狙い澄ましたシュートを放ってゴールネットを揺らした。流星学園は中野が壁にパスをして壁が良い位置にボールをトラップしてそこを蹴り込むといったトリックプレーを見せてきた。桂がボールを拾うとそのまま走ってボールをセンターポイントに置いた。
後藤(理解してはいたが、これはかなり面倒臭そうな相手だ。)
このプレーで佐倉中央は慎重になり、消極的なプレーが増えた。ファールを与えては何があるか分からない、そのような感情が選手を覆っていた。
26分、流星学園がCKを得た。
桂(アレやるんなら今しかないよな?)
アイコンタクトに中野は黙って頷く。すると、ペナルティエリアで5人が手を繋いで輪になった。佐倉中央が最も警戒しているプレーだ。
「Wow...流星...今、その輝きを!」
特有の歌が終わったと同時に一斉に散らばった。その時、ボールが飛んでくる…のではなくショートコーナーを選択したのだ。
光(また虚をつかれた!)
ボールを受けた稲森は左足でコントロールしてクロスを上げた。
愛子(今度は飛ぶ!)
ボールがエリア内深くに入った時、愛子は飛び出してパンチングを狙った。しかしボールは急激に曲がって落ちた。
愛子(しまった!)
ボールはノーマークの桂が膝に当ててゴール左隅に流し込んだ。流星学園は上がっていた全員で走り出して観客席にいる応援団にアピールした。対する佐倉中央は呆然と立ち尽くしてしまった。
真帆「このままじゃ負けちゃうよ…」
つかさ「…」
つかさは眉を顰めて柵をギュッと握っている。
その直後のプレーでも佐倉中央は流星学園にCKを献上してしまった。キッカーは桂。
桂(面白いもの見せてやろうじゃん)
先ほどと同じように流星学園のプレーヤーが輪を作って回り始めた。
光(いつ散らばる?いつ蹴られる?)
なかなかボールは蹴られない。そして散らばったかと思うと、プレーヤーは全員バックステップを踏んだ。
光「釣られるな!」
しかし、既に光以外のプレーヤーが前に出てしまったため中はガラ空きであった。そこにクロスが上がるかと思いきや、ボールは回転がかかっておりファーサイド側のネットを揺らした。
愛子(バナナシュートか…。)
1-3。前半とはいえリードを保たれてしまうと逃げ切られる可能性が高い。後藤は光に手招きをした。
後藤「ちょっとポジションを変える。飛鳥を瑞希とのCFにして雛をLSBに置いてくれ。次のプレー、一発勝負を狙う為に桃子に大きく前に蹴るよう指示してほしい。切り替えて行けよ」
光「分かりました。」
メンバーを集めて円陣でこのことを伝えると、ポジションを動かした。飛鳥はセンターサークルのすぐ外にいる。笛がなって試合が再開すると瑞希が軽く触り、桃子はボールを浮かせて一度リフティングを挟んで大きく、高く前に蹴り出した。その間に飛鳥と桃子、瑞希は前線に猛ダッシュした。ボールは大きく伸びてペナルティエリアで差し掛かったところで落ちた。飛鳥はCBを背負って桃子に落とすと、桃子はスルーした。
瑞希(つかさから習ったあのシュートを見せるなら今!)
瑞希はバウンドした瞬間に右足のアウトサイド側でボールを振り抜いた。ボールは低弾道でカーブしてゴールに向かったがGKが爪先に当てて何とか失点を防いだ。会場から声が漏れた。
チャンスはまだ続く。CKのポジションには仁美が立っている。少し考えたあと、桃子を呼んで主審に一言告げて後ろに下がった。
桃子が手を上げると流星学園は驚きの光景を目にした。
「Wow...佐倉中央…」
その瞬間に流星学園の全員の視線が輪を組んで回っている選手たちに移った。
桃子(今だ!)
それを見逃さずに桃子がドリブルを開始した。
稲森「おい!こっちや!」
しかしその時には既に桃子はペナルティエリアに侵入して右足を振り抜いてゴールネットを揺らしていた。主審はゴールを示している。
桂「いやいや、審判!おかしいでしょ!」
稲森「いつからCKはドリブルで始めていいってなったんですか!」
主審「君たちがよく見ていなかっただけだろう?しっかりプレーは始まっていたよ。」
桂「どういうことですか!」
主審「20番の子、ボールに触ってから下がったからその時点でプレーは始まっていたんだ」
仁美は足でボールをコントロールしており、それはプレーを再開したという合図だと主審に話していたのだ。そのため桃子はドリブルから得点することができたのだった。
稲森「くっそ…流星!取り返すぞ!」
この5分間で両チーム合わせて3点が入った。観客も大盛り上がりであった。その後の前半は得点は動かず、2-3という乱打戦で前半を終えた。
後藤「2点取ったことは良いことだ。ただ、セットプレーはやはり対応に困るな。もうこれ以上は失点を重ねたくない。ポジションは最初のやつに戻そう。攻撃に関しては非常に良いアイデアで桃子を中心に出来ていたな。そこに続くとなお良いって感じか。」
亜紀「気付いたんですけど、このチームオフサイドトラップに凄く弱そうな気がします。」
後藤「ほう、それはどうしてだ?」
亜紀「まず、あのグルグルにしろ他のプレーにしろ、中の動きはあまり多くない気がしたんです。それに、前へ前への意識が強いから知らず知らずのうちにオフサイドポジションにいることが何回かあったからですね。」
後藤「良いことに気付いたな。なら後半の守備はそれを意識してやってみよう。交代はなし」
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