第17話3位決定戦へ

後藤『見てた通り、3決の相手は日大船橋となった。試合を見てて分かると思うが、かなり激しいチームだ。攻めも守りもガツガツ来るぞ。だけど、主砲のCB2番の大森はかなり危険な選手だ。』

その後、後藤は先程あったことを全て話した。選手は真剣な面持ちで耳を傾けていた。

後藤『だから、スカウトとかそういう話は絶対に個人で抱えないで私に相談してくれ。』

光『私達は監督とマネージャー合わせて25人で1チームだから、1人の隠し事はみんなに迷惑がかかる。別に私たちの間で疾しい事なんて一つもないだろう。もし悩みが監督に言えなかったら私でもいいし、他のチームメイトでもいい。絶対に相談しよう。』

飛鳥『今年は総体の優勝はないけど、まだ3位ならあり得る。それだけでも凄いことよ。だから明日絶対勝って3位に入って、県大会で優勝して関東大会の切符を手に入れよう』

チームには笑顔が戻った。

後藤『それと、変更点が一つ。明日は会場がここじゃなくなった。』

マヤ『え?どこになったんですか?』

後藤『ふっふっふっ…聞いて驚くことなかれ…。なんと!フクダ電子アリーナだ!』

チームから歓声が上がる。

後藤『第1試合、10:00からキックオフだ。多分、これまでの比じゃないぐらい観客が見に来る。そしてテレビ中継もされるらしいからアピールしたい者はしっかりプレーするように!明日は絶対に勝とうな!解散!』

5月18日。この日は月曜日だったが、佐倉中央の教員、生徒合わせて865人は全員フクダ電子アリーナに居た。理事長が特別に休校を作り、応援に行かせたのだった。サッカー部の保護者だけでなく、応援の生徒の保護者もかなり多く来ていた。

後藤『さあ、いよいよだな。今日は絶対に勝とう。スタメンとベンチ入りを発表する』

スタメン・ベンチ入りは以下の通り

スタメン

GK 12 愛子

CB 2 光

LSB 15 美春

RSB 3 飛鳥

DMF 6 マヤ

DMF 8 亜紀

LSW 14 花

RSW 7 かれん

OMF 9 桃子

OMF 17 梨子

CF 10 つかさ


ベンチ入り

4 樹里 5 悠香 11 千景 13 真希 16 柚月

18 伊織 20 仁美 21 瑞希 22 咲


後藤『雛はボールボーイをやってくれ。』

雛『分かりました。』

夏海は他の生徒とともに観客席の最前列で見ている。

夏海『絶対勝ってねーー!!!』

その言葉に光が手を上げる。そして円陣を組み、光が気合を入れた。

光『今日は、相手の攻撃をしっかり耐えて、絶対に勝とう!行くぞ!』

オー!

佐倉中央ボールで試合が始まった。

大森『行け!攻めろ!』

その声と同時に日大船橋は攻め上がってきた。スピードは準決勝よりも数段上がっているが、佐倉中央も負けてはいなかった。佐倉中央は速いパス回しで日大船橋を翻弄するが、全てにおいて付いてきている。

光(なかなか突破口が見えない…。)

光の思った通り、前線はすぐにボールを奪おうと寄せて来ていて細かく繋ごうにもプレスが速い為奪われる危険性がある。それならばロングパスを出そうとするが、大森の守備範囲に入ってしまっている。

美春『キャプテン!こっちに!』

美春が手を上げて走っている。光は美春にバックスピンをかけて浮かせたスルーパスを出す。しかし、それを狙っていたかの如く白いユニフォームが2人寄せてくる。それを見た美春は中のマヤに軽く落とす。白いユニフォームを躱してマヤからのダイレクトパスを受ける。完璧なワンツーパスに会場が沸く。

大森『何してんだ!早く寄せに行け!』

日大船橋のSBが寄せるが美春は軽々と抜き去った。会場は更に沸く。

男子生徒『行け!攻め上がれ!』

女子生徒『あの子一年生なんだって!』

大森は痺れを切らして美春に近づいてきた。

美春(大森さんが寄せてきた!これを待っていた!)

大森との距離が3mまで迫ったとき、美春は右足のアウトサイドでスルーパスを出した。

大森(しまった!これが狙われていたか!)

ボールは走ってきたつかさに渡った。つかさとGKのマッチアップ。佐倉中央の歓声が更に大きくなる。

男子生徒『行けー!決めろー!』

女子生徒『決めてー!』

夏海(つかさちゃん…!決めて…!)

つかさ(みんなが繋いできてくれたボール…このチャンスを逃したらもしかしたらチャンスは来ないかも…。大森さんは着々と近づいてる…。変に遅らせたら取られるから、多少距離があっても…ここで打つ!)

つかさはボールの下を鋭く蹴った。ボールは高く上がる。

大森(ラッキー!チョンボだ!)

確かに側から見ればボールは上がり過ぎている。ゴールの遥か上を行くであろうコースだ。しかし、ボールはペナルティエリアに差し掛かった途端、ゴールを目掛けて落ちてきた。GKは慌てて飛んだものの間に合わない。ゴール深くにボールが突き刺さった。その瞬間、爆発のような歓声が生まれて、あっという間に満員の会場を埋め尽くした。

男子生徒『うおおお!!!かっけー!!!』

女子生徒『やったぁ!!!』

夏海(つかさちゃんなら絶対に決めると思ってた!)

つかさは佐倉中央の応援席に向かってハートマークを作った。その瞬間、より一層佐倉中央の応援席の歓声が大きくなった。

女子生徒『かわいいーー!!!』

男子生徒『いいぞー!赤井!』

つかさは桃子やかれんに撫でられながら自陣へ戻った。

大森(あんなところでドライブシュートなんか打てるのかよ…。正直舐めてたな…)

大森『おい!下を向くな!気合入れ直せ!勝つんだろ!?まだ70分もあんだよ!取り返そうぜ!』

大森の声で日大船橋の選手だけでなく、応援席にも気合いが入れ直された。

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