第15話 新事実
愛子『キャプテン、飛鳥さん、桃子さん、つかさ、ちょっといいですか?』
愛子は観客席裏に4人を呼び出した。
光『愛子、さっきのことか?』
愛子『はい。実は…』
愛子は羽田に言われたことを赤裸々に話した。
桃子『なるほどな。つまり、あたしたちはスカウトをされたってことだな!』
飛鳥『それで、あなたたちはまだ2年間あるけど、私たち4人はどうすれば?』
つかさ『そうだよ。先輩たちは大学とかも考えなきゃならないし…。』
愛子『それは…。』
羽田『あなたたち4人は今年の終わりまでに決めてもらう。』
桃子『噂をすれば何とやら。』
羽田『大学で学ぶので有ればその分サッカー選手として遅れを取る。仮に1年遅れを取ったらもう同期には追いつけないと思って。』
光『なるほどな。でも、まだ半年以上考える時間はあるということだな。』
羽田『そういうこと。もし入団するのだったら高校卒業と共にチームに入ってもらうし、入団せずに大学に行くのであればおそらくチャンスは二度と来ない。』
飛鳥『随分とプレッシャーをかけるわね。』
羽田『当たり前。クラブチームを日本一、いや、世界一に導くのだから。』
つかさ『ただそれだけの理由で私たちをスカウトしたのですか?』
羽田『そういうこと。』
後藤『なら話は早いな。答えは全員ラビッツには入団しない。そうだろ?お前ら。』
後藤が階段を下って5人の前に着いた。
羽田『監督が止めるなんて言っても無駄ですよ?』
後藤『ひとつ聞いていいか?お前は千葉ラビッツの入団が内定しているみたいだが、それは誰が決めたことだ?』
羽田『そんなものスカウトに決まってるじゃないですか。そんなのも分かってないんですか?』
羽田は後藤を小馬鹿にした様子で笑っている。
後藤『そうか。それにしてはお前は何も知らないんだな。それでは決勝は勝てないな。』
羽田『あなたは一体どの面を下げて話しているんですか?』
後藤『仕方ない。お前、スマホを持ってるか?それで私の名前“後藤良美”と調べてみろ。全てが分かるさ。』
羽田だけでなく、つかさもスマホを取り出して画面を見る。
羽田『は…?え…?何で…?』
後藤『ビックリしただろ?』
つかさ『先生…ヴィクトリアのスカウトだったんですか!?』
光『なんだって!?』
桃子『マジかよ!?』
飛鳥『本当!?』
愛子『見せて!』
そこに書かれていたのは2年前のヴィクトリア関東のサイトだった。後藤は昨年、スカウトマンの職を降りて教師になったのだ。後藤は10年前、天才女子サッカー選手と謳われていて、高校卒業後にヴィクトリアの入団が決まっていたが、県大会のベスト4で負傷し、そのまま選手人生を終えたが、諦めきれずにスカウトマンになったのだ。19歳のスカウトマンは次々と良い選手を獲得して21歳の時にヴィクトリアを優勝に導いたのだ。そして自分の高校のサッカー部を日本一に導くために教師になったのだ。
後藤『つまり、お前は姉のコネみたいなもんだ。クラブチームに選出されたことを自惚れるな。そしてお前の権力を使って私たちのチームに手を出すな。』
羽田『くっ…ヴィクトリアの元スカウトかなんか知らないけど、この大会で優勝して、県大会でもう一度あなた達を倒して直接謝罪をさせてやりますから!』
後藤『おー頑張れ。ただ、この試合に勝つのは暁月。そして優勝するのも暁月だ。明日が楽しみだな。』
羽田は顔を真っ赤にして荒々しく足音を立てながら会場を後にした。
後藤(ますますダメな選手だな。少なくともこの試合を見れば変わったのにな)
愛子『後藤先生、ありがとうございます』
後藤『ん?何がだ?』
愛子『私、危うく入団すると言うところでした。先生がいなかったらどうなっていたことか…。』
後藤『気にするな。人間誰しも血迷うことはある。ただ、どんな状況でも判断は落ち着くことだ。無理にすぐ答えを出そうとすると絶対に失敗する。これから気をつけてな。それから、お前は夏海の分まで頑張らなきゃならない。3決、頼んだぞ。』
後藤は愛子の頭を撫でた。その瞬間、愛子からは安堵の涙が流れていた。後藤は愛子を抱きしめた。4人も愛子を抱きしめた。
後藤『さ、後半が始まるぞ。観に行こう。』
6人は席に戻った。
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