第14話 試合後の対談 試合観戦

後藤『惜しかったな。だけど、まだここで終わりじゃない。明日の3決、絶対に勝とう』

光『監督、夏海の症状はどうだったんですか?』

後藤『夏海は橈骨、つまり腕の骨にヒビが入っていた。完治までに約1ヶ月。県大会は7月から始まるからなんとか間に合うらしい。だからこれからは愛子に正GKとして佐倉中央のゴールを守ってもらう。』

広瀬『明日の3決の対戦相手は次の試合で決まるらしいので全員で分析も兼ねて見ましょう。』

つかさ『昨年千葉県大会優勝の暁月と日大船橋ですね。』

試合が始まる前、愛子は観客席の裏側に向かった。そこには青いジャージの生徒が1人いた。流谷高校の10番、羽田琴音だった。

羽田『来たね。』

愛子『どうして私1人だけを呼び出したんですか?』

羽田『実はね、私の姉もサッカーをしていて、千葉ラビッツに所属してるの』

愛子『もしかして、羽田優子選手ですか?』

羽田『そう。それで、姉からこの大会を通して県内で最も良いGKを見つけてきてほしいと言われたの。それで、私はあなたが最も良いGKと思ったの。』

愛子『でも、次の暁月や日大船橋のGKとか四元さんではないんですか?』

羽田『四元は高校卒業をした後、堺FCレディースへの入団が決まっている。それで、日大船橋のGKは昨年見た限り、あまり良くなかった。暁月のGKは私の姉は選ぶなと言っていた。だからあなたがいいと思ったの。』

愛子『今はまだ答えが出ません。考える時間を下さい。』

羽田『そんなに深刻な顔をしなくても大丈夫よ。高校卒業後に入団してくれるかどうかだから高校卒業までに答えを出せればいいわ。あ、そうだ、LINEを持っておいて。』

愛子『ありがとうございます。』

羽田『あと、あなたのところのキャプテンと

1番、3番、9番、10番も非常にいい選手だと思うわ。もしよかったら話してみて。』

愛子『分かりました。ありがとうございます。』

羽田『私のLINEはサッカー以外のことを話しても大丈夫よ。勉強のこと、趣味のこと、なんでも話したいことがあれば話して』

愛子『ありがとうございます!』

羽田『じゃあ、明日の3決頑張って。』

愛子『羽田さんも、決勝頑張ってください』

2人は固い握手を交わした。愛子は一礼すると、観客席に戻った。

光『お、戻ったか。凄い試合だぞ。』

飛鳥『何を話してたの?』

愛子『それはまた後で話します。』

光『分かった。今は試合に集中しよう。』

日大船橋はとにかくアツい高校だ。無尽蔵な体力でガンガン攻めて点を取りに行くタイプ。だがしかし、暁月は冷静にパスを回している。全員が攻撃も守備もできるタイプで、相互補完の取れているチームと言ってもいい。そして暁月のスターは何と言っても…

女子生徒『キャー!神谷さんがボールを持った!!!』

赤いユニフォームの30番、CMF3年の神谷玲。彼女は既にヴィクトリア関東入団が決まっている。清流のような美しいドリブル、足技で日大船橋のDFを掻い潜る。そしてシュート。シュートは若干前に出ていたGKの頭上を超える。しかし、ネットは揺らされなかった。

大森『ったく、あんだけシュートは警戒しとけって言ったろ!』

白いユニフォーム2番、CBでキャプテンの大森祐希だ。男勝りで日大船橋で最もアツい選手。CBにも関わらず、チーム最多6ゴールを上げている。セットプレーだけでなく、最終ラインからドリブルで駆け上がってのシュートもできるなんとも恐ろしいCBだ。

女子生徒『ちょっと!何よあの女!神谷さんのシュートが台無しじゃない!』

それが地獄耳の大森に届いてしまった。

大森『チッ。何が神谷さんだ…。これで黙らせてやる!』

何と大森は自陣のゴール付近から超ロングシュートを放ったのだ。ボールは選手の間を一直線に進む。勢いそのままで暁月のゴールへ向かう。会場からはどよめきが起こった。大森のシュートはもちろんだが、それをキャッチした暁月の18番3年GK佐久間にもだった。

そこで前半は終了した。

後藤『どちらも危険選手はだいぶ分かってきたな?』

広瀬『これはどっちと当たってもおかしくないです。後半もよく観察しましょう。』

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