第13話 苦しい試合 後編 vs流谷

後半に入って佐倉中央は怒涛の攻撃を始めたが、全てGKの四元に止められる。後半17分、かれんが桃子にクロスを上げた。四元が飛び出すが、両者触れることは出来なかった。ボールはつかさの足元に収まったが、つかさはゴールに背を向けていた。

つかさ(花さんにパスを出しても多分ゴールには入らない…。でも、私は1人背負ってる…。アレを試してみる価値はあるかも…)つかさはなんと角度を変えてヒールでシュートを放った。しかも、グラウンダーではなく、チップキックのように浮いたシュート。シュートはつかさの背負っていたDFの股を抜いて浮き上がった。四元だけでなく、ペナルティエリアにいた全員が唖然として動けなかった。ボールはゴールネット左隅に吸い込まれた。つかさはそれを確認してコーナーフラッグに走り出した。そしてムバッペをイメージしたゴールパフォーマンスをした。会場はまたしても大歓声に包まれた。

桃子『つかさ!ナイシュー!!』

飛鳥『つかさ、ありがとう!』

かれん『つかさちゃん、すごいね!』

花『やるじゃない!』

つかさはメンバーに囲まれながら自陣に戻った。

四元『本当に分からんな。アイツの動きは…。気を引き締めよう。』

羽田『また入れ返すしかないな。』

羽田がサークルにボールをセットした。主審の笛が鳴らされた。その後、幾度となく両チームはシュートチャンスはあったものの、点は入らなかった。そして、後半のアディショナルタイムは1分と表示された。羽田がペナルティエリア外でドリブルしているが、佐倉中央はつかさ、桃子、マヤの3人がかりで食い止めている。

羽田(くそっ!シュートできない!でも、私が打たなきゃ入れることはできない!)

羽田は一瞬できた隙間にシュートを放った。ゴールの右上向かってシュートは飛んでいく。愛子は思いきり手を伸ばす。しかし、シュートはポストを叩き、関口がトラップをした。そしてクロスを上げる瞬間、佐倉中央はDFラインを上げた。

羽田(オフサイドトラップ!?くそっ!頼む!誰も動かないでくれ!)

羽田はペナルティエリアに飛び込んだ。オフサイドフラッグは上がっていない。青いユニフォームが風に靡く。そしてクロスボールに羽田の頭がジャストミートする。愛子もボールに触れるが、羽田のヘディングシュートの勢いが勝った。愛子と羽田はボールとともにゴールに突っ込んだ。その時、主審が長い笛を三回鳴らした。流谷の応援席は大歓声が沸いた。試合終了。1-2。佐倉中央高校は初黒星を喫した。会場は流谷の勝利を讃える拍手だけでなく、健闘した佐倉中央にも送られた。

青いユニフォームの10番は悔しさで涙を流して倒れていたグレーのユニフォームの12番を起こした。

羽田『最後は挨拶だ。自分の列に向かえ。』

愛子『はい…。』

両チームが礼をする。握手をする時に選手間での会話があった。

四元『あのヒールシュートを決められた悔しさは絶対に忘れない。3決、絶対に勝つんだよ。』

つかさ『はい!がんばります!』

羽田『きみ、ちょっと後で2人きりで話したいんだ。いいかな?』

愛子『はい。』

羽田『キャプテン、ちょっと彼女20分ほど借りますね。』

光『は、はい。』

羽田『じゃあ、後で観客席の裏に来てくれ』

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