第12話 苦しい試合 前編 vs流谷

後藤『みんなよくやった。ついにベスト4だな。次は流谷高校。前年度の総体の優勝校だ。厳しい試合になりそうだが、決勝進出を目指して頑張ろう。』

吉沢『次は17日の日曜日にフクダ電子アリーナの近くのコートで試合があります。それまでに準備を徹底的に行いましょう。』

広瀬『明日、偵察に行ってみます。それで危険選手等を確認してきますね。』

後藤『それじゃ今日は解散。明日はオフにする予定だからゆっくり体を休めてくれ。』

つかさ『流谷高かぁ。楽しみだなぁ。』

千景『まあ、一筋縄ではいかないわよね。』

桃子『今年は私たちが間違いなく台風の目だからな!この勢いで行けば大丈夫さ!』


翌日、偵察部隊は流谷高校が見える森の高台にいて、双眼鏡て覗いていた。

吉沢『みんな上手いな。』

広瀬『パス回しといい、タックルといい、シュートといい、流石優勝候補なだけはある』

吉沢『去年の優勝メンバーはCFとOMFだから間違いなくそこは要警戒』

広瀬『GKは愛子タイプかな。枠外のシュートはとことん止めている。』

吉沢『おいおい…仲間内であんな危ないタックルできるのかよ…。』

広瀬『多分、このぐらいで怪我をするようだったら出なくていいという感じか。』

吉沢『あとは、CBはかなり堅い。SBはオーバーラップでかなり攻めに出る感じかな。中盤とSWはそうでもないな。』

広瀬『見つかるのもアレだし。このぐらいにしとくか。』

さらに翌日、偵察の成果をメンバーに伝えて佐倉中央は練習をし始めた。今回は積極的に前に出してつかさにシュートをさせるという作戦で行くと決まった。

試合当日

後藤『さあ、ついに当日だな。勝っても負けても明日もここで試合がある。全員で勝つつもりで望もう。』

スタメン・ベンチは以下の通り。

スタメン

GK 1 夏海

CB 2 光

LSB 5 悠香

RSB 3 飛鳥

DMF 6 マヤ

DMF 8 亜紀

LSW 14 花

RSW 7 かれん

OMF 9 桃子

ST 11 千景

CF 10 つかさ

ベンチ入り

4 樹里 12 愛子 15 美春 16 柚月 17 梨子

18 伊織 19 雛 21 瑞希 22 咲


流谷はベンチ入りメンバーまで全員が3年だった。1、2年も30人ずつほどいるが、誰一人として選出されない。それほど厳しい部なのだ。

吉沢『偵察行ってみて、ここは普通にファール並のタックルはしてきますし、打てると思ったらどっからでも打ってきます。』

広瀬『特に、昨年の優勝メンバーのCFの羽田とOMFの関口には警戒して下さい。両SBはオーバーラップを積極的にしてきます。』

後藤『よし。それを踏まえて勝つぞ!』


とは言ったものの、流谷の攻撃のペースは今まで戦った高校よりも格段に速い。吉沢の言った通り、猛烈なタックルも仕掛けてくる。佐倉中央は作戦であるつかさに預けてシュートを打たせることができていなかった。

前半24分、佐倉中央はなんとかつかさにボールを渡せた。つかさの前にはDFが4人。つかさはダブルタッチで1人抜き、ステップオーバーでもう1人抜き、股抜きで更に1人抜いてペナルティエリアに侵入しようとしたその時、最後に抜いたCBが脚をかけたのだ。つかさは前周りに転ぶ。主審の笛が鳴り、CBにイエローカードが提示された。ようやく巡ってきたFK。キョリは23m。つかさはボールを拾いってセットした。

つかさ(このキョリだと、曲げて入れるのは難しそう。壁の頭を越えるか下を通すかのどっちかだね…。)

つかさはボールに向かって走り出した。そして勢いよくグラウンダーのシュートを放った。シュートは跳んだ壁の足を潜り抜けてゴール右隅に突き刺さ…らず、GKがなんとキャッチをしていた。

つかさ(嘘…読まれてた?とりあえず、普通には決めさせてくれないみたい…。)

四元(まさか、私たちが貴方の研究をしてないとでも?赤井つかさ…やはり危険選手ね。何とか取れたけど想像以上だわ…。)

GKの四元はボールを投げた。ボールはハーフウェイラインを超えた。

桃子『ちょっ!どんだけ飛ぶんだよ!』

そのボールをFWの羽田はなんとノーバウンドでシュートした。距離は35m以上も離れていたが、ボールは強烈なスピードとドライブ回転が掛かっていた。夏海はシュートコースを予測してボールを身体の真ん中でキャッチした。しかし、強烈な回転が掛かっていたため、夏海の腕からボールが溢れた。

夏海(キャッチしなきゃ!)

夏海はボールに飛びかかりキャッチしたが、

夏海の左腕に強い痛みが走った。シュートに詰めようとした羽田の右足がボールでは無く、夏海の左腕を蹴ってしまったのだ。夏海はその場で倒れ込む。羽田はボールをタッチラインに蹴り出した。

羽田『ごめんなさい!大丈夫ですか!?』

光『夏海!大丈夫か!?』

飛鳥『夏海、力は入る?』

夏海『なかなかいいシュートじゃないですか羽田さん…。』

後藤『愛子!すぐに準備しろ!』

愛子『は、はい!』

後藤『それから吉沢と広瀬はすぐに応急処置をして夏海を病院に連れて行け!』

吉沢『分かりました!』

広瀬『了解しました!』

夏海は広瀬の肩を借りながら吉沢のいる場所まで向かった。負傷交代した夏海の代わりに愛子が入った。羽田には口頭での注意が言い渡された。飛鳥はスローインで光にパスして、光は相手陣地へ大きく蹴り出した。会場からはフェアプレーを賞賛する拍手が贈られた。その14分後の前半40分、飛鳥が愛子にボールを戻そうとパスをした。しかし、そのパスは思った以上に弱く、羽田がボール目掛けて走ってきた。

飛鳥(しまった!どうにかして外に出さないと!)

飛鳥はボールに脚を伸ばした。しかし、ボールに届かずに羽田の足にかかった。羽田は倒れて主審の笛が鳴る。怪我をしてないか確認するために飛鳥と愛子が近づく。その瞬間羽田は斜め前にボールを蹴った。壁が作られる前にリスタートをしたのだ。そこに走り込んできた関口がシュートを放つ。愛子はシュートコースに飛び込むが、時すでに遅し。ボールはゴールネットを揺らした。流谷の応援席は爆発したかの如く歓声が沸いた。関口は流谷の応援席に向かって指を刺した。そこに羽田をはじめ、青いユニフォームが駆け寄ってきた。そこで前半終了の笛が鳴らされた。

後藤『もったいない失点だったな。後半はまず一点取ろう。暗い顔すんな。』

広瀬『まだ終わったわけじゃないから最後まで走りましょう。』

飛鳥『愛子、ごめん。私のミスで…。』

愛子『今はまだ謝らないで下さい。試合終了まで時間はあります。』

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