第8話初公式戦vs佐倉北
ユニフォーム、用具チェックが終わり、フェアプレーセレモニーが行われた。その後、キャプテン同士が残った。
光(やっぱり178cmってでかいな…。)
山寺(佐倉のダービー戦。負けられない。)
2人は握手をしてコイントスが行われた。結果は佐倉中央ボールで始めることになった。
伊織『絶対勝ってねー!』
咲『みんなのペースでね〜!』
ベンチ入り出来なかった2人も観客席で声援を送っている。佐倉中央の応援席は30人程度だったが、佐倉北は50人以上いた。
主審『それじゃ、公式戦2試合目、佐倉北高校対佐倉中央高校の試合を始めます。』
主審が笛を鳴らした。
つかさはボールを後ろに下げた。しかし、奇妙なことに佐倉北の選手は誰も前に上がっては来なかった。
愛子『キャプテン、これはスコアレスドローでPKに持ち込もうとしてるのかもしれません。ラインを高めに保ってもいいですよ。』
光『分かった。』
佐倉中央は最終ラインをハーフウェイラインまで上げて敵陣地でボールを回し始めた。するといきなりFWとSWが走り出してきた。しかし、その隙をついて練習で行なった速いパス回しで佐倉北のペナルティエリアまで辿り着いた。かれんがつかさにクロスボールを上げたが、178cmの山寺があっさりキャッチし、すぐにボールを投げた。
光『しまった!戻れ!』
山寺の投げたボールはノーバウンドでハーフウェイラインを超えていた。佐倉北の攻撃陣が上がっていたのはこの為だった。そして3対1という絶望的な状況。佐倉北のFWがトラップをする瞬間に何と愛子がハーフウェイライン付近まで上がっておりインターセプトして思い切り前に蹴り出した。ボールはどんどん伸びる。山寺はキャッチしようとしたが、つかさがヘディングで合わせるフリをしてブラインドになった。そして次の瞬間、ボールはゴールネットを揺らしていた。前半9分。佐倉中央の公式戦第1号ゴールはまさかのGK1年の愛子だった。まさかのゴールに佐倉中央ベンチ、応援席は総立ちで大歓声が起こった。愛子はハーフウェイラインを超えたところで天高く拳を突き上げた。そこに光を始め全員が近寄って撫でたり抱きついたりもう揉みくちゃだ。
足立『してやられたわね。なんとか追いつきましょう。』
山寺『あのブラインドの10番といい、1年キーパーといい…ムカつく奴らばっかだな。』
足立『直ぐにあの子が取り返すわよ』
2人は背番号46番の小さな選手を見つめた。
主審が笛を鳴らし、試合が再開した。その途端、一際小さい選手がドリブルで佐倉中央を翻弄し始めた。彼女は143cmの1年生ストライカーの清水祥子。巧みな足捌きと速さを武器にしている。そんな小さい選手はファールでないタックルも倒れてしまえばファールを貰える時があるのだ。現に梨子が体を入れた時に倒れてファールを得ている。
梨子『あのちっこいの、気をつけて扱わなきゃね。』
桃子『あぁ。だけどな、マネージャーはこいつの存在に気づいていた。だからこそ監督はマヤや亜紀を入れずに柚月を入れたんだ。』
千景『どういうこと?』
つかさ『柚月さんは153cm。小柄な選手には大柄な選手で吹き飛ばすより、小柄な選手でマッチアップさせた方がファールは取られにくいです。』
佐倉北はFKなのにも関わらず、4人しか上がってなかった。しかも、肝心なキックはバーの遥か上。
桃子『さ、私たちの攻撃だぜ。』
愛子からのゴールキックを桃子が落ち着いてトラップすると、攻撃陣は一気に駆け上がった。桃子は千景にパスをすると、千景はポストプレーで梨子に落とし、梨子はチップキックで美春にスルーパスを出した。美春はキーパーに取られないように巻いた球をファーサイドに出した。ファーサイドにはノーマークのつかさ。つかさはボレーシュートの体勢に入っている。DF陣がブロックに入ろうと飛び込むが、つかさは中に折り返した。そこに走り込んでいた桃子が滑り込みゴールネットを揺らした。桃子はコーナーフラッグの近くでC・ロナウドのゴールパフォーマンスを真似た。
飛鳥『桃子嬉しそうね』
光『クラブチームに行かずにここに残って3年間公式戦が無かったからな。そりゃ初ゴールは嬉しいさ。』
その後は両者得点なしで前半を終えた。佐倉中央は2-0とリードしている。
広瀬『2点というのは最も危険な点差です。引き締めましょう。』
後藤『それじゃ、かれんと花がチェンジ、千景と瑞希がチェンジで後半入るぞ。2人ともお疲れ様。』
後半に入って少し佐倉北が攻めるようになってきた。しかし、やはり攻めは上手くないので直ぐにボールを取られてクリアされる。そんな中、後半11分に清水が強引にDFの間を掻い潜り、ペナルティエリアに侵入した。そこに柚月がタックルをした。清水は倒れるがショルダーチャージは正当なタックルのため、笛は鳴らない。そのまま柚月はボールをクリアしたが…。
清水『おい!ファールだろ!』
佐倉北の選手が一斉に抗議を始める。応援席では審判に対してブーイングが起こっている
主審『ショルダーチャージだからノーファールだ。逆にシミュレーションに見えたぞ。』
それでも佐倉北は抗議を辞めない。主審は清水にイエローカードを提示した。そこから佐倉北のプレーは荒々しくなった。足をかける、突き飛ばす、度を超えたタックルなどでカードが連発し、最終的に1人(清水)が退場、7人にイエローカードが提示された。しかし、そんな中でも佐倉中央は落ち着いたプレーをして最終的につかさが2点、桃子、美春、瑞希が1点追加して7-0で勝利した。
後藤『みんなよくやった。怪我はないか?』
多少擦り傷等はあるものの、骨折や捻挫などの怪我をした者はいなかった。
吉沢『あそこまで荒いチームとは思いませんでしたね。もう少し研究が必要でしたね。』
広瀬『次は3日後。岩名運動公園で幕張南とですね。詳しい情報は明日言いますね。』
後藤『とにかく、まずは初戦突破だな。今日は各自成果反省などを確認してゆっくり休んでくれ。それじゃ、解散。』
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