第3話人数が増えた!
次の日の放課後、コートには見慣れない生徒が6人いた。つかさと美春が近づくと1人の生徒が話しかけてきた。
愛子『1年A組、青山愛子。GKだった。私達もサッカー部を希望しているんだ。昨日のミニゲームを遠くから見ていた。それで…いきなりで申し訳ないけどシュートを打ってくれない?』
つかさ『もちろんいいよ!他の子はどうする?』
愛子『じゃあ、他も打ってもらおうかな。私はエリア外のシュートは決められたことがないの。』
その言葉の通り、つかさ以外の6人は全員愛子に止められた。
愛子『さあ、あなたの本気を見せて頂戴!』
つかさ(ずいぶん自信があるみたい。ならばこっちだって本気でいかせてもらうよ…!)
つかさはハーフウェイラインとペナルティエリアの間にボールを置いた。
5歩下がって1歩右に移動した。
愛子(左で蹴るのかしら。それとも右のアウトサイド?まあ、どっちにしろ…止める。)
つかさは走り出した。そして、右足を振り抜いた。ボールは明らかに枠内に向かっていないが、愛子は右に飛んだ。
愛子(速いアウトサイド!でも、間に合わない距離ではない!枠外を外れたように見えるけど、あの人は私から見て右隅を狙った!)
愛子は思い切り手を伸ばした。鋭い回転がかかったボールは愛子の予想通り枠内に向かっていた。しかし、愛子が予測して飛んだ右ではなく、真逆の愛子から見てゴール左隅にボールは吸い込まれた。ずちゃっという鈍い音を立ててボールは落ちた。
つかさ『やった。私が初めて愛子ちゃんから枠外シュートを決めた!』
愛子『どんな蹴り方してるの?』
つかさ『んーと、アウトサイドでボールの左4分の1ぐらいを強く蹴るイメージかな。』
愛子『これ、インターハイ狙えるよ。』
つかさ『狙っちゃう?』
そこに2、3年がやってきて、光が話した。
光『おお、一年も8人になったんだな。それじゃ、キーパーの君とつかさと美春以外の一年生は自己紹介してくれ。』
瑞希『木内瑞希です。まるまるの初心者ですが宜しくお願い致します。』
仁美『川島仁美です。SBとCBしてました』
雛『泉雛です。CBでした。』
梨子『三村梨子です。姉の桃子と同じOMFです。』
咲『宮崎咲です。私も初心者です。宜しくお願いします。』
光『これで合計22人。2チームつくれるね。』
後藤『初心者の2人はポジションをテストするから私と一緒に来てくれ。メニューは夏海に伝えてあるからその通りにな。』
咲と瑞希はメンバーとは逆のコートでテストをし始めた。
夏海『それじゃあ、今日は3対3の構図よ。私と愛子ちゃん以外で正ポジションがCB、SB、DMFの人はピンクのビブス、それ以外は緑のビブスを着てね。来たらピンクはゴール側、緑は逆側に3人ずつ着いて。』
すぐに9人と8人に分かれた。
最初のピンクチームはスタメンの飛鳥、悠香、樹里。対する緑チームは桃子、梨子、伊織のOMFトリオ。桃子が飛鳥にボールをパスする。それをダイレクトで伊織に渡す。その瞬間、悠香が伊織との距離を詰めた。しかし、伊織は落ち着いて桃子にボールをはたいて梨子に回す。梨子はドリブルで上がり始めた。
桃子『梨子!こっちだ!』
と手を挙げながら桃子が呼ぶ。それを見た梨子はボールを右いる桃子ではなく、ノールックで左前に転がした。DF陣は完全に裏を突かれた。ペナルティエリアに入ったところでボールをトラップした伊織は夏海と1対1の状況になった。
伊織(キーパーはこの距離で前に出てこないならループと股抜きはできない。インステップで左に打つか、アウトサイドで右に打つか…。この状況なら左が得策!)
伊織はインステップで左隅にシュートを放った。愛子は手を伸ばしたが届かなかった。
桃子『ナイシュー!』
梨子『いいよ!その調子ね!』
飛鳥『ごめん。まんまと釣られた。』
愛子『練習でよかったです。やっぱりオフェンスの声の存在は大きいですね。とりあえず、声が出なかった方にも細心の注意を払うように心がけましょう。』
キーパーは夏海に変わった。ピンクチームは真希、仁美、雛のCBトリオ、緑チームは千景、かれん、花のスタメンOFトリオになった。花がボールを受け取ると、OFの3人は幅を広く取り始めた。
夏海『このままやらせちゃだめ!パスの出所とシュートコースを切って!』
花とマッチアップしたのは仁美だった。花はフェイントなどで揺さぶりをかけるが、仁美は釣られない。花が右アウトサイドでコントロールして中央の千景に出そうとした瞬間、仁美がボールをカットするために足を伸ばした。しかしそれは罠で、そのままアウトサイドでコントロールしながら360°回転して前に進んだ。仁美は慌てて体勢を立て直し、花を追いかけた。花がクロスを上げる瞬間、仁美がスライディングでカットしようとした。ボールは仁美の足に当たったが、クロスのはずのボールはゴールの右隅へ吸い込まれる。少し前に出ていた夏海は思いきり手を伸ばすが届かない。だが、雛がオーバーヘッドで掻き出す。落ちてきた球をかれんがヘディングで押し込もうとするが、真希がさらに掻き出すが千景がその球を落ち着いて胸トラップしてコントロールすると強烈なシュートを左足で叩き込む。今度こそ終わりだと思ったが、仁美がヘディングで飛び込んでクリアした。チーム全体から拍手が起こる。夏海が仁美に手を差し伸べる。
夏海『ナイスブロック。気迫が凄かったよ』
仁美『ありがとう。逆に最初に声かけてもらえなかったら好きにやられてたよ。』
と仁美も手を握り返す。
夏海『じゃあ、次のグループは準備して』
と声が掛かる。次のピンクチームは柚月、亜紀、マヤのDMFトリオ。対するはつかさ、美春、梨子。右サイドの美春にボールが渡ったとき、既に亜紀とマッチアップしていた。
美春(速い…。とりあえず中央の梨子に…)
パスを梨子に通して梨子は中央を駆け上がるが、亜紀とマヤが挟み撃ちでボールと梨子の間に体を入れた、しかしボールは左サイドにいたつかさがサイドをかえてかっさらった。
つかさ『美春!左サイドに!』
美春『わ、わかった!』
愛子『つかさは二枚ついて!もう一枚はゾーンマークでいい!』
つかさ(どうしようか…。シュートは多分止められる。パスもカットされるかも…。なら、あれを試してみよう!)
つかさは亜紀の股抜きを…いや、亜紀の左足を狙ってパスをした。つかさの予想通り亜紀の左足に当たったボールはワンツーの要領でつかさの足元に。
愛子(しまった!シュートか!?)
つかさが選択したのは、後ろにいた梨子へのパスだった。DFはおろか、キーパー含め全員つかさに釣られていたため、梨子はガラ空きの状態でパスを受けた。梨子は右足を振り抜いた。弾丸シュートがゴールに突き刺さった。
つかさ『ナイシュー梨子!』
梨子『つかさが引き付けてくれたから助かったよ。』
美春『シュートの威力も凄かったわよ!』
愛子『また負けた。どうしたらつかさに勝てるんだ?』
亜紀『股抜きで1人ワンツーされたのは初めてよ…。』
マヤ『でもあれは県内、いや、日本有数のストライカーよ。』
柚月『次こそは止めるよ。』
その後、10本ほどやったが、つかさのチームは一度も負けなかった。
光『みんな、お疲れ様。とりあえず、こいつらもテストが終わったからポジションを発表させてもらうよ。瑞希はCF、咲はSWが適正だから同じポジションのやつはポジションを奪われないようにな。』
瑞希『が、がんばります!』
咲『頑張ります。』
光『それじゃあミニゲームだ。旧スタメンのメンバー対その他でやるぞ。旧スタメンはピンクのビブスを着てくれ。その他は緑ビブスを着てくれ。』
ピンクチームと緑チームに分かれてポジションも決定した。ピンクチームは4-5-1、緑チームは3-5-2のフォーメーションで固まった。
瑞希『私はどんな事をすればいいかな?』
つかさ『どこまでわかる?』
瑞希『基本的なルールは分かります。オフサイドとかも。』
つかさ『そっか。じゃあ、基本は前に出て悠香先輩とキャプテンの間ぐらいで張ってればいいよ。シュートとかも打てたら打ってちゃっていいし、ドリブルは無理せずにね。』
瑞希『わかった!』
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