『54』 つまらない嘘

        1つ前のページ⤴『23』


「粒越さん。探偵の前でつまらない嘘はつかないでください。あなたは本当は、トイレに行ってなどいないのではないですか?」


「え? どうして?」

 彼女は首をかしげて目を丸くした。

 俺はすかさず、証拠を叩きつけた。ビシッと音が鳴りそうな勢いで指さした。


「その頬のあんこはどう説明するんですか?」

「え? あんこ?」


 粒越さんはほほに手をやると、初めてあんこに気づいたようだった。

「も~、早く言ってよ~、恥ずかしい」

 ペロっとあんこをなめて、粒越さんはほほを赤くした。

「ふふっ、でも美味しい」

「トイレに行っていたなら、ほほのあんこに気づいたはずです。あなたは本当はトイレなど行っていなかった。本当はダンゴを食べた証拠を隠しに行っていたのではないですか?」

「すごーい! 探偵さんって本当に、いろんなところを見ているんですねぇ」

 ん? 粒越さんには俺の追及がまったく響いていないようだった。

「でもごめんなさい。私がトイレに行ったのに、あんこに気づかなかったのは理由があるんです」

「理由?」

「トイレに行ったら、んですよ。だから、自分の顔を確認することができなかったんです」

 これだ。

 手がかりを追求したからこそ、推測が先に進んだ感じがする。これを続けていけば、この事件の本当の形がわかる、そんな気がした。

「本当に鏡が割れていたんですか?」

「気になるなら、トイレに確認しに行ってください! 探偵さん!」

 あ、あとあんこのこと教えてくれて、ありがとうございました! と大げさにお辞儀をする粒越さん。ほんと、可愛いな!



◆◇手がかり入手◆◇

以下の情報をメモしておいてください。


 手がかりE『鏡は割れている?』を入手。

 手がかり番号Eに『11』と記入。



 本当にトイレの鏡が割れていたなら、ほほのあんこに気づかなくても仕方がない。それに、粒越さんがトイレに行った何よりの証明になる。


 トイレに確認しに行こう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る