猫の皿
"優先座席"、なんと素晴らしい響きか。
歳を取るのは少し嫌だがコイツに堂々と座れる日が近づくと考えれば悪くない。
退屈な通勤時間、そんなことを毎日考え、羨望の眼差しで優先座席を見つめるのだ。
いつものように電車に揺られていると、ふとあることに気付く。
乗降口の脇、車椅子の若い女性と、彼女の隣の優先座席に座っている男性。
それ自体はなにも不思議ではない。
しかし先日この男性は白杖を持った女性とそのまた前は松葉杖をついた男性とこの電車に乗っていた。
若いのに関心だ。
きっと困っている人間を見過ごせない正義感の強い男性なのだろう。
「お若いのにしっかりとしてらっしゃいますね」
私は不審に思われないように最新の注意を払いながら彼に話しかけた。
「え、あ、えーっと、なんのことでしょうか?」
しまった、もしかしたら人違いだったかもしれない。
この世の中で私が正解なことなど一つとしてないのだから。
「えっと、よく困っている人を助けておられるようにお見受けしましたもので……人違いでしたら申し訳ありません」
「あぁ、なるほど、ええ、その、不思議なもので、これは趣味……といいますか、一種のライフハックよようなもので。身体の不自由な人間を連れていると優先座席を譲ってもらえるんですよ。僕は健康体なのにね」
糞怪談蒐集 坂無さかな @Oreno_Gondola
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