第23話ピクシー

歌舞伎で金田を捕まえた京也と花道は、半ば強引にドラッグの事を吐かせ、畑中が24区で営業している売春クラブについて聞き出していた。



「そ、その女は確か…弘田彩佳だ。一年前くらいに畑中の兄貴が連れてきた娘だ」


「よく把握してるじゃねーか。あんた、見た目頭悪そうなのにな」

花道に言われたくない、と言った金田だが、元々は金田がクラブの店長代行として、取り仕切るはずだったので、だいたいの女達の名前と顔は、金田は把握していた。



「それで、畑中とどういう関係なんや?」


「は、畑中の兄貴は3年程前に、ある男に言われて売春クラブを始めたんだ。しかも、未成年専門の」


「未成年?」


「ああ、そうだ。その男から顧客名簿をもらい、未成年の男女を集めろと言われ、その女集めに俺達は使われていた」


「はーん。なるほどな…あんたらそれで、あの頃えらい幅訊かせとったんか」


「そうだ。地元近辺のケツは興腺会が持つと言う約束で、俺達は必死で女を集めた。半ば強引な方法もとったが、なぜか捕まったりしたやつは一人も居なかった」


「ん?興腺会のシマは歌舞伎だろ?なぜ24区にだせんだよ」


「…それは。その男が顧客がVIPばかりで、歌舞伎には行かないから、24区の俺のシマを使え。そう言ってきたんだ」


「ほう、24区にシマを持つマフィアか…ヤバイな、花道…」


「いや、もうだいぶ前からヤバいけどな京也。あの女頼むぜ…」


「それでパイセン続き」


「24区の端の方にある、雑居ビルを一棟借りて〝ピクシー〟と言う名前で会員制の売春クラブを出した畑中の兄貴は、あまりの高い売り上げを上げたので、興奮していた。女達はどんどん増えるし、会員達はバカバカと金を落としていってくれるし。組に内緒だから、シノギの上がり上納金も入れなくていい。畑中の兄貴は笑いが止まらなくなっていった」


「はん、ピクシー?妖精?あいつ洒落た名前つけやがって」


「ほんまや。妖精って顔かあいつ」


「うっ…」

二人の会話に、笑いを堪えていた金田だった。


「パイセン。自分笑てる場合ちゃうで」


「…うっ。」


「で?」


「そ、そこで行われていたオークションで、処女の女と男は、まず、会員専用のアカウントを使ったリモートでオークションにかけられる。そこで、弘田彩佳は最高額を叩き出した」


「最高額?いくら?」

「お前そこ?」


「1000万」


「1000万!?」


「こ、声でかいよ…」


「あー、わりいパイセン」


「マジかよ。1000万…」


「ああ。その辺りから畑中の兄貴は女達に気を配るようになり、アッシュを配るようになった。最初は、痛みが軽減される。嫌悪感がなくなる。そう言って渡していたが。その内、人気の者達にはポンプも使うようになった。年端もいかないやつらが、アッシュのキメウチを覚えた日にゃ、それは当然のように離れられなくなるやつが続出していった。あの弘田彩佳もそうだ。そして、弘田彩佳の最初にセリ落とした会員が、畑中の兄貴に弘田彩佳を水上げしたいと言ってきた」


「水揚げ?今の時代に?」

「なんだ水揚げって」


「会員は、年のいった有力者達が多かったので、そう言う言葉を使うものが多かった。弘田彩佳は、パッと見地味に見えるが、あー言う清楚な感じの方が高く値がついた。弘田彩佳は、顔の割には身体はかなりできていたからな」


「弘田彩佳の身体をなんでお前が知ってるんだ」

「パイセンまさか」


「お、俺なんかが商品に手えつけたら殺される。あそこの女達はビルの中では、スク水着風の衣装を着させられていたから、身体つきくらいはわかる。ちなみに、男はブリーフ一枚だけどな」


「…で、結局弘田彩佳を売ったのか?」


「ああ、その会員は、アッシュの方でも上客だし、これまでかなりの額を落としてくれていたからな」


「パイセン。その会員の名前は?」


「いや、そこまでは…」


「パイセン」

口ごもる金田に、花道がすかさず凄んだが

金田は本当に知らないようだった。


「お、お前ら首突っ込みすぎた。ピクシーの顧客には、かなりの有力者達が名を連ねている。噂では財閥系の月光の会のメンバーも居ると言う噂もある。死ぬぞ」


「はん、ご心配ありがとよパイセン。ほな俺ら行くわ」


「パイセン、相手によって態度変えるのは、そりゃもう不良じゃない。ただのゴミだ」


「くっ…」




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