第22話公安のスパイ0-2
「総ちゃん、知ってるかい?」
コニャックを一口グビリと飲んだ乙中が
話を変えてきた。
「なんですか?正さん」
「どうやら、このファミリーの中に公安のスパイが入り込んでいるらしい」
「そ、そんなバカな」
「そう。そんなバカな事がと俺も思うよ。なんせ、組織とこの24区のセキュリティシステムは、世界最新鋭のシステムで、途中からそんな輩が入ってきても、丸分かりだ」
「その通りです。うちの組織は全国で四万人程いますが、末端の組員まで全員個人登録カードを所持している。ありえない」
「…。次のサミットで、その事も議題に上がるらしい。ま、総ちゃんも周りに目を光らせておいてくれ」
-六本木-
「入ります」
「おう、入れ」
六本木〝松方ファミリー〟の本部事務所に、一人の男が入ってきた。
この六本木を預かる松方ファミリーは、元々は設立当時のメンバーのバックグラウンドをしていた組織で、関西の小さな4次団体の組だったのだが、そのままマフィアンコミュニティの成長と共に、こちらも大きくなったいき、六本木と24区のカジノの一部の利権を取り仕切るまでになっていた。
先代の松方武丸は、年齢的なものを理由に、自身が齡40を過ぎてからの初子、松方虎丸に跡目を譲り、大阪に戻り隠居生活を送っていた。
「西条か、今日はどうした?」
「はい。24区にあの挫王聖が現れたとの事です」
「なに!?挫王聖が?バカな」
「はい。何を企んでいるのか、歌舞伎のチンピラに自身のシマのシノギを与えているらしいです」
「なんだと!歌舞伎のチンピラに?…何を考えている…挫王聖」
「どうされますか?松方会長」
「どうするもこうするもないだろ西条。やつが居ると、このコミュニティの輪が崩れる。手筈通りにやれ」
「かしこまりました」
「西条」
「はい」
「忘れるなよ。元公安に居たお前の過去を消し、お前の個人登録カードを偽造してウチに入れたのは、俺がこのコミュニティの全権利を取るのに、お前の頭脳が必要だと思ったからだ」
「はい。重々承知しております」
「挫王聖か…今頃現れやがって。西条、抜かるなよ」
西条は頭を深く下げ、事務所から出て行った。
挫王聖め…
このコミュニティで、唯一真壁会長に匹敵する派閥を持つのは、この松方ファミリーだ
待ってろ挫王聖。お前の伝説はとっくに終わっている事を、思い知らせてやる。
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