第19話アッシュ3

「お、お前は!?風間!?」


「金田パイセーン、久しぶりー」


突然目の前に花道が現れて、驚きを隠せない表情で後ずさりをした金田だが、後ろに立っていた者に肩がぶつかり振り向くと、京也が立っていた。


「ま、真壁!?」


「パイセーン、ちょっと顔貸したってや」


そう言って、京也は金田の肩を組むと、花道も反対側から肩を組んだ。


もう逃げられないと、諦めた金田の額からは汗が滴り落ちた。


そのまま、二人は金田を路地裏の方に連れて行った。


-2日前-

「これを」

戸田は、小さなパケに入った2つの錠剤を見せてきた。


「これなに?バファリンかな」


「明日香さん、僕が調べたところによると、この錠剤は〝アッシュ〟と呼ばれているものです」


「アッシュ?何それ?」


「はい、〝アッシュ〟は最近若者の間で流行している、ケミカルドラッグの1つので、メスカリンやカフェイン等が含まれている、主にクラブ系のパーティーで用いられているらしいです」


「へえ…メス?カフェオレね…」


「あの弘田さんが、そんな場所に行くはずもなく、こんなもの持っているなんてあり得ません」


「なに?弘田が持ってたのこれ」

真希は手に取り、珍しそうに眺めていた。

「アッシュね。何回かニュースとかで見たことあるわ」

真希から人差し指と中指で摘まむようにして取って、カレンもそれを眺めていた。


「弘田さんが、最後に学校に来たときに、私が心配で声をかけると、「かまわないで」と言って早退してしまいました。その時、弘田さんのポケットからこれが落ちて」


「ふーん…わかった。茂、戸田ちゃん。そのカフェオレちょっと借りて良い?」




「という訳なの京也」


「は?何がと言う訳なんや?」

「お前らこれが何か分かってんのか?」


明日香は、早速京也と花道に話をしに行った。


「分かってるよ。クラブで使うんでしょ?」

「メスとカフェオレだっけ?」

「え、メスカリンとカフェインじゃなかった真希?」


「…これは、セックスドラッグだ」

「ああ、俺らのまわりにも、これ使ってるやつが出て来て。確か…アッシュ」


「そう、それそれ」

「それそれじゃねえ。係わんなや明日香。アッシュを扱っているのは、マフィアンコミュニティやぞ」


「…京也は、ほっとけって言うの?」

「ああ、そうや」


「アホ!バカ!いいもん!私らでやるから!行こう、真希、カレン」


「お、おい…」



で、なんでこうなるんだろうな…

京也のやつ、いつも冷静で的確な判断をするのが、あいつの持ち味でもあるのに。

明日香の事になるとこれだ。

早くあいつの恋を成就させねーと、こっちの身が持たねーわ。


「ぐわっ!」

路地裏に連れていかれた金田は、早速京也に顔を殴られ、倒れこんだ。


「お、お前、いきなり!俺は興腺会のもんだぞ!」

そう言ってかましてくる金田のお腹に、京也は素早く蹴りを入れた。


「ぐうっ!く…」


「パイセン。いつでも興腺会の上のもん連れて来いや」

しゃがみながら金田の髪をつかみ、京也は凄んで見せた。


「ダーカネパイセーン。これの事でちょっと聞きたいんだけど」

からかうような口調で、花道も隣にしゃがみ、明日香達から預かったパケを指で2回ほど弾きながら金田に見せた。


「そ、それは…」

こ、こいつらは無理だ…

脅しなんかきく相手じゃねー。

「後、これも」

今度は京也が、ポケットからパケに入った白い粉状のもの摘まみだし見せた。


「それはアッシュ!?」


「お!知ってるみたいやんパイセン」

「正直に全部話してくれたら、楽しいお話し合い的な感じで、今日は帰りますよパイセーン」


何がお話し合いだ。

いきなりパンチいれやがって。

俺は親にも殴られた事ねーんだよ。

だからこうなったのか…

そもそも「あ痛てっ!」


「お前、何明後日見とんねん?俺らの話し聞いてんのか?」

金田の横顔を軽く叩き、京也はまた凄んだ。


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