第10話興腺会畑中2
「ん?なんだ?あの真ん中のショートヘアーの女、どっかで見たことあんな…どこだっけ…」
鳴り物入りで興腺会に入ったは良いけど、俺が入った頃は、すでにシノギのほとんどが24区に持ってかれて、全然食えなかった。
そこで、ある男の持ちかけで、親父に内緒で始めた売春クラブ。これがめちゃくちゃ当たった✨
働かせている女は、全員未成年で、家出か帰るところがないか、家に何らかの事情があるかのガキばっかりで、一時は大丈夫か?と思ったが、世の中ロリコンの多いのにはびっくりしたぜ。
しかも、通常より高い値段で取引される。
しかも、端た金渡して適当に怒鳴ってりゃ必死で働いてくれるし。
それに、女集めもこのクソガキどもが勝手にやってくれるし。
このシノギを始めてから、こいつら結構使えることに気づいた。
最初、中坊のケツなんて恥ずかしくてもてねー。なんて思ってたけど。
地元で幅効かせたいってだけで、なんでも必死でやってくれる。
しかも、端た金で(笑)
今回のあの三人娘も、なかなか上物じゃないか。
笑いが止まんないぜ。
しかし、あのショートヘアー。どっかで…
「おい!なめやがってクソガキ!」
金田がどんどん明日香達に近寄ってくる。
「で、どうすんの明日香。話し合い」
「あれ?まだ話し合い続いてたの明日香?」
どうしよ…
真希とカレンにあー言われても、話し合いってどう進めれば良いの?
パパにもっと詳しく聞いとけばよかった。
だいたいさ、私の言う事誰も聞いてくれないじゃない、ここに居る人全員。
あー、だんだん腹立ってきた。
「おい、お前。さっきから何ぶつぶつ言ってんだ?男みたいな見た目しやがてっよ」
そう言って金田は明日香の頭を一回叩いた。
「お前らは、こっちの言う事素直に聞いてりゃ良いんだよ」
金田は今度は明日香のおでこを人差し指で軽く押した。
後ろに仰け反るようになった明日香は、そのままその反動を利用して、金田の胸元に頭突きを入れた。
「ぐわっ」
「金田さん!?」
驚く山田達の前で、今度は胸を押さえてしゃがんだ姿勢になった金田の顎に、明日香は強烈なアッパーのようなパンチを喰らわしたのだった。
2㍍ほど後ろにぶっ飛んだ金田と同時に、山田達も地べたに倒れ込んでいた。
真希のヌンチャクとカレンの正拳突きが、明日香のアッパーとほぼ同時に入っていた。
山田達は痛がり、起き上がってこれないでいたが、金田は口を押さえ、ゆっくりと立ち上がろうとしていた。
「て、てめえ…」
金田はポケットからナイフを出した。
ゆっくり明日香に近づく金田だったが、その明日香の目の前になんと、茂が立っていたのだった。
「茂、どいときな」
そう明日香に言われた茂だが、茂は震えながらも金田をじっと見ていた。
「な、ナイフを納めてください」
「なんだとメガネ!」
金田は茂にナイフをつきつけようとしたが、茂はそのナイフを素手で掴んだ。
「茂!?」
明日香達と、そこに居る誰もが息を飲んだ。
「なんだメガネ!指落とされてーのか!」
金田が声をあげ、力んだと同時に茂の手からは血が地面に滴り落ちた。
「離せ茂!」
前に出ようとする明日香を、茂はナイフを掴んでいない右手で制止した。
いつもの茂なら、その血を見ただけでひるんで腰をおとしているのだが、明日香達の、真っ直ぐな相手に向かっていく目を近くで見ていて、茂の中の何かが変わってきていた。
「か、金田さん、やばいっすよ」
山田が止めようとしたが、完全に頭にきている金田は止められなかった。
「うるせー!お前も動くんじゃねー!」
「おい、金田。ちょっと待て」
畑中も金田に声をかけたが、まるで聞こえていないようだった。
「クソあま、ぶっ殺したる!」
そう言って、ナイフを握った腕に力を入れようとした金田を、後ろから金田の頭をつかみ、畑中は握りつけた。
「痛て、は、畑中さん…」
「金田、俺が待てって言えば、待つんだよてめえ」
「は、はい、すいません」
「おい、メガネ。手え離せや」
畑中に言われ、トーンダウンした金田の様子を見て、茂はゆっくりとナイフから手を離した。
明日香は、ポケットからハンカチを出して、茂の毛の平に当てた。
「茂、心臓より上に上げときな」
「は、はい。ありがとうございます明日香さん」
金田を力で押さえつけた畑中は、明日香の顔をじっと見つめていた。
「おい、お前名前は?」
「も、守川茂です」
「お前じゃねー!そっちのショートヘアーのほうだ」
「…明日香。沢流明日香」
やっぱり!?
あれは、24区の直参、乙中ファミリーの代貸しのとこの娘だ!?
間違いねー。
年始の集まりで、うちの親父に自慢げに写真を見せているのをたまたま見たことがある。
ここが地元だったのか。
てっきり24区に住んでいると思っていたのに。頼むぜホント…
ちっ、しょーがねー。今日の所は帰るか。
「おい、金田。帰るぞ」
「な、なんでですか?ここは詰めないのシメシつかんでしょーが畑中さん!」
その瞬間、金田の顔面に畑中の上から落とす大降りのパンチが入った。
地面に叩きつけるように倒れた金田は、ピクリとも動かなかった。
「何度も言わせんじゃねーよ」
それを見ていたその場に居る男子達は、皆一様に唾を飲み込み、目を見開いた状態で硬直していた。
畑中は、気絶した金田を片手で持ち上げて、肩に重い荷物でも乗せるように、土手の上に停めている車へと歩きだした。
硬直している男子達は、その様子を静かに見ていたが、明日香達は違った。
「どこ行くの?」
明日香がそう言うと、真希もヌンチャクを肩に乗せて続いた。
「勝手に終わらせんじゃねーよオッサン!」
カレンは明日香の頭を撫でながら、畑中に質問した。
「結局このメガネちゃんの10万円は、もう良いのかしら?」
土手を上がった畑中は振り返った。
「10万円?」
「そうだよ!あんた名前は?私の名前聞いたんだから、そっちも答えろ!」
「はっ、そう言うことか。おい、ガキ!俺は畑中だ。覚えておけや」
畑中はそう言うと、車後ろの席に金田を投げ込んで、直ぐに車を走らせてその場を去っていった。
「…くっ」
「何?茂?」
「…いえ、安心したら、手が急に痛くなってきて…」
「保健室行く?」
「お、いえ、大丈夫です。うち病院なんで」
この事があって以来、僕の日常は嘘のように静かになりましたが、相変わらず友達は出来ませんでした。
そして、この事がきっかけで、この後、明日香さん達は壮絶な中学生活を送ることとなり、僕は僕で、明日香さん専門の千里眼となり、そこである秘密をしってしまうこととなった。
この秘密がきっかけとなり、高校に上がったばかりの明日香さんに、さらに試練が待ち受けていた。
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